第5章 気になる人って…
「なんか最近ついてないね、紫苑」
「日頃の行いでも悪いのかな、ハハ」
新しい死覇装を着た紫苑は、結っていた髪をほどいて、手拭いに髪の水分を丁寧に吸わせる
とかすのは琴乃がやってくれた
「紫苑髪長いねー」
「ん、短いの似合わないしね」
「そうかなー似合いそうだけど」
「短くしたら、琴乃とお揃いになっちゃうじゃん」
「え、お揃いにしたくないって聞こえる!ひどい!」
「ごめんごめん、それは冗談」
執務室に移動すると紫苑は座ってなと、琴乃は給湯室でお茶を淹れてくれている
「ありがと、琴乃」
「じゃあ私掃除戻るね。みんなには伝えておくから、もうちょっと休んでな」
「うん、行ってらっしゃい」
琴乃が去ったあと、執務室は静かになった
それもそのはず、今日はみんな掃除で出払っている
紫苑はお茶をのみ、頬杖をついて日頃の行いについて考えていた
「何かいいことしなきゃなー……くしゅんっ」
さすがに体が少しは冷えてしまったようだ
紫苑は体をあたためようともう一度お茶を飲む
キィ…─
執務室の扉が開いた
「あれ、紫苑サン?」
「う、浦原隊長。お疲れ様です」
隊長の前だとうまく喋れない…
もうあれから大分たつのに
「どうしたんスか?髪おろしてるの珍しいっスね。はっ!まさかサボり…」
「ち、違いますよ!屋根掃除のバケツが落ちてきて水を被ってしまって…」
そういえば…と喜助は紫苑に近づく
「髪…少し濡れてますね…」
まだ乾ききっていない紫苑の髪を、喜助の指がすぅ─っととかす
「おろしてるのも、可愛いっスね…綺麗…」
紫苑の胸はドキっと音をたてる
「あと、顔ちょっと赤いですよ」
熱があるんじゃ…と喜助は自分の手のひらを紫苑のおでこにあてる
「か、顔はっ…」
浦原隊長のせいだよ!と言いたいのを必死に我慢する
ひんやりとした喜助の手が妙に気持ちいい
「ん~手じゃよくわかんないっスね」
喜助は紫苑から手を離したかと思うと、その手で紫苑の前髪をあげた