第5章 気になる人って…
第5章 気になる人って…
夕方─
その日の研修を終えた紫苑と琴乃は執務室に戻る
「え、やだ!書類が!」
何々?と琴乃が紫苑の机の上の書類を見る
誰かがお茶をこぼしたのか、書類はかなりの枚数が濡れていた
「なにそれ!こぼしたのなら片付けて欲しいよね!」
そう言いながら、ある程度の水分を手拭いで拭き、1枚1枚広げて伸ばしていく
「紫苑ちゃん、琴乃ちゃん、どうしたの?」
そこに沙也加さんが現れた
「大変!全く誰が…私も手伝うわ」
「え、大丈夫ですよ!申し訳ないですそんなの…」
「いいのいいの。みんなでやったほうが早く終わるし、こういうときはお互い様よ」
本当に尊敬できる先輩
沙也加さんみたいになれたら良いな
そしたら、浦原隊長にも振り向いてもらえるかな…
「おわったー!」
「本当にありがとうございました。助かりました」
「さ、もう遅くなっちゃったから早く帰りなね」
紫苑はもう一度お礼を言い、琴乃と共に執務室を出る
最初は小さなことだった
誰にでも起こり得るような、そんな些細なこと
…─
紫苑たちが入隊して、しばらくたった
ある程度基本的な業務にも慣れてきたところで、今日は定期的にある隊舎内の掃除の日
紫苑は琴乃と中庭の掃き掃除をしていた
二人の脇の廊下では水拭きを、屋根のほうも掃除しているらしい
「この中庭ってちょっとさみしいと思わない?」
琴乃が中庭を見渡しながら言う
「そうねー、お花とかもっと咲いてたらいいよね」
そんな他愛もない話をしていたとき
バシャーッ─!
「あ!西園寺さん!」
「ごめんなさい!大丈夫ですか!」
屋根の掃除に使っていた水を汲んだバケツが落ちてきて、紫苑は大量の水をかぶってしまった
「紫苑!大丈夫!?」
「だ、大丈夫。びっくりしたぁ…」
屋根にいた二人の男性死神が降りてきて、申し訳なさそうに頭を下げられる
「気にしないで、避けられなかった私も悪いし」
「早く乾かして着替えないと風邪ひいちゃうよ」
琴乃に促されるまま更衣室へと向かう