第35章 手出したら命無いっスよ
「なぁお前聞いたか?十二番隊の女神の話」
「女神ぃ?なんだよそれ」
入隊の儀に向かう新入隊員の二人は、噂に聞く女神についての話で盛り上がっていた
「変人…じゃなかった、個性的な十二番隊の面子の中に美人で仕事ができて、まるで女神のような死神がいるって話」
「まじで?俺、希望の十三番隊には入れなかったけど、今の女神の話でなんかやる気でたわー」
「確か五席に昇進したって聞いたぜ」
「今日の入隊の儀で見れっといいな」
…─
私は今日の入隊の儀の進行を確認していた
「毎回思うけど、かったるい内容よねー」
私の進行表を覗き見ながら、琴乃が背中にのし掛かってくる
「元はと言えばこれ、琴乃に割り当てられた仕事なんだからね!」
「だって私より紫苑のが得意そうじゃーん」
自分は向いてないから、と私に押し付けて自分は去年同様見学する気満々だ
「私は可愛い後輩でも探してこよっかなー」
ギロッと琴乃を睨むとそそくさと去っていく
「まったく…」
また進行表に目を通し、内容を確認する
「紫苑、司会進行引き受けてくれたんスね」
「喜助さん!」
いつの間にか、開きっぱなしの扉に背中を預けていた喜助さんに声をかけられる
「琴乃サボりに行ったよ」
「それは困りましたねぇ」
とか言いながら別に大して怒ってないんだよね
「ちょっとボク一仕事してくるから、遅れるって言っといて」
「え、でももう始まるよ?」
「すぐ戻るっスから」
それじゃと、喜助さんは瞬歩で去った
早速進行が危ぶまれてきた
はー緊張する
…─
「初めまして、みなさん。十二番隊へようこそ」
壇上に立ち、一度深呼吸をしてから話し始める
その時新入隊員たちがざわつく
「私は五席の西園寺紫苑。隊長と副隊長はもう少しで来ると思うから、少し待っててね」
社交辞令の笑顔を添えると、更にざわっと空気が揺れる
(お、おい、もしかしてあの人が)
(間違いない、女神だよ!女神)
(やべーかわいいじゃん!)
(かわいいって言うより美人系じゃね?)
(俺十二番隊来て良かった……)