第33章 喜助さんの話しないで
琴乃の頭にポンと手をおいて、2人は隊の外れまで歩いた
「ほんなら仕事終わったら迎え行くわ」
「うん、待ってるね」
迎えに来てもらうってこんな感じなのかな
こんな風に、心が暖かくなるのかな
楽しみで、そわそわして、早く来ないかなって
紫苑もいつもこんな気持ちだったのかな
…─
「しー!静かに!」
「何々?」
「今ならいいモン見れるって!」
「全員で行ったら気づかれるって」
仮眠室の前にできる人だかり…
我先にと衝立の奥を覗こうと背を伸ばす
「隊長と西園寺さんが仲良く寝てるって」
「こんな貴重なの滅多に見れないよ」
「すっごい幸せそうだったよー」
「隊長もあんな顔するんだね」
隊のトップと、普段割りと落ち着いていて冷静な紫苑の2人が寝てる姿は隊員達にとっては物珍しい光景だった
「ほらほらーみんな仕事して!」
それを見かけた琴乃が声をあげる
それを合図に散り散りになる隊員達
「全く野次馬しちゃって…」
と言いつつ、ちゃっかり写真とっちゃったんだけどね
あとで紫苑にあげよ…怒るかな?
…─
お腹の辺りに重みを感じて目を開ける
きすけさん?
隣ではさっきまで介抱してくれていた喜助さんが寝息をたてている
そりゃ疲れるよね
10日間ほとんど寝てなかったんじゃないかな
薬が効いたのか、体がぐんと楽になった
その代わりにどっぷりと汗をかいている
さすがに気持ち悪いな…
あーでもお腹もすいた
ふと目を配ると、お昼に残したおかゆが残っていた
それに手を伸ばすと口に運び始めた
「美味し…」
さすがに冷たくはなっていたけど
喜助さんが作ってくれたんだよね…
風邪、移ってないといいけど
おかゆを食べ終えても喜助さんは起きる様子もない
シャワー浴びてきていいかな…
喜助の髪を優しく撫でる
「ん…………」
「ごめん、起こしちゃった?」