第33章 喜助さんの話しないで
「ひよ里サン、今丁度寝たとこで」
「なんや寝てしもたんか、ならこれ紫苑に食わしたってくれ」
「ひよ里サンはりんご好きですね」
「風邪ひいたときはりんごや。昔からそう育ってきたんや」
袋に入った5、6個のりんごの1つを取って眺める
部屋を出たひよ里は、寝ていた紫苑の辛そうな表情を思い返していた
大丈夫やろか…
「ぅおっと……!」
「ったぁー!誰やねん、ウチにぶつかったんわ!」
よろけたひよ里が怒りを露にしながら振り返る
「おースマンスマン、小さすぎて見えへんかったわー」
長髪の金髪が笑いを堪えながらひよ里を見下ろしている
「こんのっハゲシンジィ!お前なんかただのデクの棒やんけ!」
「誰がデクの棒やこら!」
今にも取っ組み合いを始めようと言わんばかりの勢いで、二人の間にはバチバチと火花がたつ
その時二人の近くから殺気に似た、冷たくて刺々した空気を感じて、2人は冷や汗をかきながら同時にその原因へ顔を向ける
「お二人とも、喧嘩なら余所でやってくれませんかねぇ?」
細い目から光る眼光
霊圧は上がってないはずなのに感じる空気の重み
「「ス、スンマセン」」
ひよ里と真子は喜助に殺される前にその場を離れた
「全く、紫苑の体に響くじゃないスか」
1人でブツブツ文句を言いながらりんごを机に置くと、自身の瞼が重くなってきていることに気付く
「さすがにボクも眠くなってきた…」
…─
「ひよ里のせいでエライ怖い目におうたやんけ」
「元はといえばハゲがぶつかってくんのが悪いんやで」
「だからー、あれはお前がチビなんが…」
「誰がチビやてぇ!」
喧嘩を始めた2人をまたか、と微笑ましく見守る隊員達
「そんで…はァ……何しに来たんやハゲ」
一通り暴れてお互いに呼吸を整えながら、多少落ち着いて話し始める
「はッそうや……琴乃に聞いて紫苑の見舞いに来たんや」
お前と遊んでる場合じゃないねん
平子は踵を返すと先程の仮眠室に向かう