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With me

第33章 喜助さんの話しないで



気づいたら陽が一番高いところにきていた


「ありゃ、もうこんな時間」


そう言って喜助は仮眠室を出た

厨房に向かっていると、隊員たちが次々に声をかけてくる


「隊長!」

「西園寺さん大丈夫ですか?」

「最近空元気だったから心配で…」


紫苑を心配して隊員たちが駆け寄ってくる

紫苑はみんなに慕われてるんスね…


「まだ熱が高いけど、きっと良くなりますよ」

「隊長、ついていてあげてくださいね」

「西園寺さんずっと寂しそうだったから」


もちろん、と言って再び厨房を目指す


紫苑のお昼ご飯を作るためだ

薬は先程まとめて作ってある

自分の分と2つおかゆを持って仮眠室に戻る


まだ寝ているかもしれない、と静かに部屋に入る

紫苑の苦しそうな呼吸だけが聞こえる


「紫苑…」


そこには先程よりも頬を赤くして、額に少し汗をかいている紫苑がいた

熱が更にあがってきたんだろう

呼吸も大分荒い


額の温くなった手拭いを再び濡らして、紫苑の汗を拭いてあげると、うっすらと目をあけた


「きすけ…さん」

「ごはん食べれる?」


トロンとした目はどこに焦点を定めているかわからない


「……」


返事のない紫苑を見るとどうにも無理そうだ


「一口でいいから食べましょ」


おかゆを少しすくって紫苑の口に運ぶ

小さな口をやっと開いた紫苑はおかゆを受け取った


「もう少し食べる?」


ふるふると首を横にふる紫苑をみて、喜助はおかゆをおいた


「食べたくなったら言ってくださいね」

「…ありがと」


小さく弱々しい声は喜助の胸を締め付けた


「飲め…ないよね?」


薬に手をかけながら紫苑を見る

無言を、肯定と受けとる喜助

薬と水を自身の口に含んだ


「んっ…」


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