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With me

第33章 喜助さんの話しないで



ボクは立ち上がり扉をゆっくりと開ける


「あ、隊長。おはようございます」

「おはよっス、琴乃サン」

「あーこれ隊長ですね」


そう言って扉にかけていた"入室禁止"の札を指差す


「バレました?」

「どうせ紫苑と如何わしいことでもしようとしてたんでしょ?」

「さすがに病人にそんなことしないっスよ」

「ハハッ、そうですよね。そんなことより、紫苑どうですか?」


氷水と手拭いを手に、琴乃は部屋の中へ歩を進める


「結構熱高そうっス」

「紫苑、仕事中は割りと無理してましたから」

「ボクのせいっスね…」


琴乃は手拭いを濡らして固く絞ると、紫苑の額にのせた

ひやりと冷たい感触に紫苑がピクッと反応する

少し開いた口からは浅い呼吸が続いている

時々肩を上下しながら息をする紫苑を見てられなくて視線をそらす


「ちょっとほったらかしに、しすぎちゃいましたね」


優しく手を取ると、ほんの少しキュと握り返してくれた気がした


「ほんと、紫苑て隊長が居なくなったらどうなっちゃうんだろう」

「生きていけないって、言ってました」

「紫苑なら本当に死んじゃうかもしれないですね」


ハハッと苦笑いする琴乃

ゾクッと背中に嫌なものが走る


紫苑ならやりかねない

もちろん離れる気なんてないけど、もし、もしもそういうことがあったら、ボクはどうしたらいい?

紫苑が死んだらボクが生きていけないよ


「じゃあ隊長、紫苑のことお願いしますね」

「もちろんっス」

「隊長も仕事程々にして休んでくださいね」


ヒラヒラと手をふると、琴乃もヒラヒラと手を振り返し、仮眠室を後にした


仕事をしながら時々紫苑を見る

頬は赤く、寝苦しいのか何度も向きを変えている

心配だ…

辛そうな紫苑を見ているのはボクも辛い…


そういえば紫苑が床に伏せているのを見るのは久しぶりだった

しばらく調子が良さそうだったから、忘れていたけど彼女は精神的な部分が体調に現れやすい

支えてあげたい…

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