第33章 喜助さんの話しないで
あくびをしながら入ってきたひよ里を横目に喜助は料理を続ける
「おかゆ…?誰か具合でも悪いんか?あー……」
多分紫苑やろな…
「ん、紫苑がちょっと」
「喜助に会われへんかったからやろ」
壁に腰を預けながらひよ里は喜助を睨む
「紫苑寂しがってました?」
「誰かさんが居らんせいで、夜もまともに寝とらんみたいやで」
器に盛りお盆にのせる
「相変わらずっスね、紫苑は」
なにかあると基本睡眠と食事を疎かにする
いや、そうさせているのは自分なんスけど…
「今仮眠室で休んでます。あ、紫苑の面倒はボクが見るので大丈夫ですよー」
「分かっとるわ!あとで見舞い行くわ」
「優しいんですね。じゃあボク紫苑のところいってきますね」
喜助はおかゆと薬を持って仮眠室へ向かった
仮眠室の扉には一応"入室禁止"の札をかけておいた
あ、そういえばひよ里サンが見舞いにくるって言ってたっけ…
まぁいいか
コンコン─
2回ほどノックをすると小さな返事が聞こえた
「紫苑~ご飯持ってきたよン」
「ありがとう」
ゆっくりと腰をあげる紫苑をすかさず手伝う
「食べれそう?」
「うん、大丈夫」
喜助からおかゆを受けとると紫苑はゆっくりと食べ始めた
「喜助さんも休んで?何日寝てないの?」
「ボクは慣れてるから平気っスよ」
紫苑がおかゆを食べている間も喜助は紫苑の頭を撫でていた
「それで、なんであんなところで寝てたんスか?珍しいっスね。仮眠室で寝ればよかったのに」
そう言うと紫苑は少し下を向いたまま黙ってしまった
その反応に喜助は少し驚いている
「え、言えないような理由なんスか?」
「…から」
「ん?」
紫苑の声が小さくて喜助は聞き直す
「喜助さんの近くに、いたかったから…」
喜助は自分の胸がドキッとするのを感じた
「隊首室のほうが、仮眠室より局に近いから…」
既に頬は赤いはずなのに、さらに赤くなった気がする
「あんまりかわいいこと言うと照れますよ」
「喜助さんも照れたりするんだね。いつも余裕そうなのに」