第33章 喜助さんの話しないで
いきなり立ち上がった紫苑は、頭がぐらんぐらんする感覚に襲われて足元がおぼつかない
目眩がして、今自分が立っているのか座ってしまったのかもわからない
頭で色々考えていると、強い力に腕を引かれた
まだ目がまわっていて自分がどうなったのかもわからない
「ったく、なんであんなところで寝てるんスか…」
段々意識が、はっきりしてきてとりあえず自分が運ばれていることに気づく
「喜助さん…?本物?」
「本物っスよ」
「会いたかった…」
声を震わせながら、精一杯の力でしがみついてくる紫苑が堪らなく可愛かった
「1人にしてごめんね」
紫苑はフルフルと首を振った
連れていかれたのは隊首室の隣、扉一枚挟んだ向こうにある仮眠室
そこにある布団にゆっくり紫苑を寝かせる
「いつから?」
「え?」
「いつから具合悪かったの?」
怒ってるのか心配してるのかわからない目が紫苑を見つめる
「あ、えと…昨日……かな?」
「なんで休まないの」
喜助は人差し指で紫苑のおでこをコツンとつつく
紫苑は一瞬まばたきをして、喜助をもう一度見つめる
「……ごめんなさい」
布団に横たわり、頬を赤くして短い呼吸を繰り返しながら、小さい声を発した紫苑はひどく弱々しく見えた
「…辛い?」
「辛くないよ…喜助さん来てくれたから」
紫苑の頭を優しくなでながら心配そうに見つめる
「待ってて、今薬作ってきますから」
「いいよ、喜助さんだってロクに寝てないんでしょ?」
ポンポンと2回ほど頭を優しく叩いた喜助は、ニコッと笑って仮眠室をあとにした
その足で再び技術開発局に向かう
紫苑のための薬はすぐに完成した
その次に向かったのは厨房
喜助はそこで鍋を取り出し料理をはじめた
「やっと出てきたんか…何しとんや?」
「あ、ひよ里サン。おはようございます」