第33章 喜助さんの話しないで
「緊急治療薬になります。喘息症状が出たときにこれで鎮静化させます。予防薬としても使えて、現世に行く前に飲んで、炎症を抑え、現世にいられるのはボクの予想では3日です」
淡々と説明をする喜助さん
格好良いなぁ
3日…
それでも全く行けなかった今までからすると、凄い進歩だ
「西園寺さんよかったですね」
「はい!」
「現世に行くのはこれからですか?」
「えぇ、次の非番にでも、と思っています」
「ではその日念のため勇音を待機させておきますね。どうぞ、お気をつけて」
報告待ってますね、と卯ノ花隊長は席を外した
それに勇音さんも続いた
「ごめんね、3日以上はちょっと難しいかもしれない」
「ううん、充分だよ。本当にありがとう」
「現世に行くのは念のため最初は1日からにしましょ」
「うん、楽しみ!」
それから私は琴乃に現世の話しを聞いて、色々な妄想を膨らませていた
…─
あれからなかなか非番が合わない…
最近喜助さんは新しい研究を始めたとかで、以前にも増して技術開発局に入り浸りだった
いつも喜助さんが無理矢理非番を合わせていたみたいだけど、それをしないということは本当に忙しいんだろう
現世に行く話は当分先かなぁ…
「なぁにため息ついてるの?」
「別に…」
「どうせ隊長としばらく会ってないからでしょ」
「別に…」
「寂しがり屋なんだから紫苑ちゃんは」
「別に…」
「あらら、重症だこりゃ」
部屋に帰ってこないのはもちろん、お昼だってちゃんと食べてるのか疑問だ
机に突っ伏して、文鎮を転がしながら喜助さんのことを考える
夜だってこんなに喜助さんが居ないことがなかったから、落ち着かなくて、いつもの温もりがなくて、なんだか眠れない
発信器のおかげでちゃんと研究室にいることは分かるけど、会いに行って邪魔になるのは嫌だった
早く研究終わらないかな…
…─
今日で紫苑と会わなくて6日目…
元気にしているだろうか…寂しがっていないだろうか
居ないほうが気が楽…とか思ってたりして
いい加減ボクも限界が近い