第33章 喜助さんの話しないで
阿近の頭には大きなこぶができていた
「今のは阿近が悪いで」
冷ややかな目でひよ里は阿近を見る
「ねぇ真子、私たちも発信器付けよっか?」
「はァ?お前喜助の近くに居って感覚おかしなっとんちゃうか?」
「ジョーダンだって、アハハ」
真子ははァーとため息をつく
…─
「埋めて」
意外な返答に喜助は、一瞬たじろぐ
「……いいんスか?本当に?」
万が一にも、ボクらの関係が無くなるようなことがあったら、その時この発信器は邪魔になってしまうだろう
「私には喜助さんしか居ないもん」
「……」
というのは余計な心配だったのかもしれない
「喜助さんは、嫌?」
だってボクが紫苑を離すはずがない
嫌だって言ったって、離れない
「嫌なわけないじゃないスか」
じゃあつけますよ
え?と言うと同時に鎖骨あたりをトン、とされたと思ったら小さく青白く光ってスゥッ─と溶けて、消えた
「え、終わり?」
一瞬の出来事だった
埋め込むなんて言うから、もっとこう手術っぽいのを想像していたんだけど
「ボクにも同じようにして」
そう言われて渡された発信器を、喜助さんの鎖骨に押し付ける
同じように光っては体の中に吸い込まれていった
「意識を集中させて」
そう言われて目を閉じると、喜助さんの存在を感じる
「あと、危険な状態になると連絡がくるようにもなっています。まぁ他にも色々と機能はあるんスけど」
「なんか、嬉しい」
「嬉しいんスか?」
「もちろん霊圧探知はもっと鍛練して、喜助さんが霊圧閉じてたって分かるようになるつもりだけど」
紫苑は発信器を埋め込んだ鎖骨当たりを弄りながら、微笑む
「喜助さんを近くに感じる。喜助さんが作ったものが、私の中にある…なんか嬉しいの」
この子は全く…
本当にボクがいないと生きていけないんじゃないか…
「心配しなくても、喜助さんがいないと生きていけないよ」
「ありゃ、漏れてました?」
心臓がゾワッとした
必死に平静を装ったけど…紫苑から、なんとなく聞きたくなかった言葉だった
紫苑をこんな風にしたのはボクだ
"ずっと一緒にいる"
その言葉にもちろん嘘はない
けど、もし……
もし……