第32章 もっと喜助さんが欲しい
手早く腰に手が回され、顎を持って上を向かされる
啄むようなキスのあと、深くに喜助の舌が入ってくる
ちゅ……くちゅ……と紫苑の口内を犯すと、水着越しに主張し始めた喜助のソレが紫苑の肌に触れる
「ん……ぁッ…」
紫苑から漏れる甘い声が、更に喜助の心臓を早める
胸の膨らみに手をかけようとしたとき
「あいた!」
コツンと、喜助の頭に何かが当たって落ちる
よく見るとそれは固そうな貝殻
「朝っぱらから何を盛っておるのじゃ」
「紫苑がこんなえっちな格好してるのが悪いんスよ」
「えぇー!喜助さんが着せたんじゃん」
「紫苑ー!泳ぐぞ」
夜一が顔だけを出して、手招きをする
「で、でも私泳いだことないよ…」
「なんじゃカナヅチか。よし儂が手取り…」
「足取りボクが教えてあげますね♪」
「邪魔するでない喜助」
「夜一サンこそどさくさに紛れて紫苑の体に触ろうなんて…」
結局交代で教えてもらうことになった
夜一サンはちゃんと教えてくれたんだけど、喜助さんは事あるごとにどこかしら触ってきて全然練習にならなかった
そのあともビーチボールをしたり、貝殻を集めたり、かき氷を食べたり…夢のような時間だった
「2人とも本当にありがとう!私すっごく幸せだったよ」
弾けんばかりの笑顔に喜助と夜一が安心したのも束の間、急に紫苑の瞳が揺れはじめた
「ど、どしたんスか?」
「紫苑、気分でも悪いかの?」
紫苑は目元の涙を拭いながら首を横にふる
「私…っ、こんなにしてもらって……でも私は2人に、何も返せてない……っ」
「なんじゃそんなことか」
「紫苑が隣にいるだけでボクは充分スよ」
「無償の愛じゃの」
「だから、笑って…ね?」
喜助が紫苑を優しく抱き締めると、喜助の胸の中で何度もうんうんと頷いた