第32章 もっと喜助さんが欲しい
「紫苑?」
「嬉し……すぎて……っ」
顔を隠していてもポロポロと涙がこぼれ落ちるのがわかる
喜助は優しく笑って紫苑を引き寄せると、自分の胸に紫苑を埋めた
「これなら現世に行けなくても問題ないでしょ?」
「うんっ……うん」
「ボクと紫苑だけの、秘密の海っスよ」
「儂を忘れてないかのぅ」
その声に顔あげると紫苑は喜助の体から離れた
「夜一さんもありがとうっ……」
喜助から離れた紫苑は夜一の胸に抱きついた
「ちょ、紫苑!ボクより夜一サンに抱きつくなんてひどいじゃないっスか!」
「おーおーかわゆいのぅ紫苑は」
夜一は紫苑を渡さんとばかりにぎゅうっと抱き締める
「ボクの紫苑なのに…」
「独占欲の強い男は好かれんぞ」
勝ち誇ったような顔をする夜一に、殺意に近い視線を投げる
「喜助さん」
夜一から離れて喜助に近づいた紫苑は、ぎゅっと喜助に抱きついた
「ありがとっ」
「い、いーえっ」
はにかむ紫苑の笑顔にやられて喜助は頬を染める
「それにしてもここ本当凄いね」
「ちなみに説明させてもらうと、波発生機にそよ風発生機とありまして、あ、太陽の温度も変えられるっスから常夏にもできますよン♪」
「喜助さんてやっぱり天才だね」
「照れるじゃないっスかぁ」
確かにこんな地下空間なのに、波はたっているし心なしか風もふいている
温度は暑くもなく寒くもなく快適
「どれ、紫苑。せっかくじゃから泳ぐとしようかの」
「で、でも私水着とか持ってない」
するとこれ以上ないほどに顔をニヤつかせた喜助が、なにやら岩影でゴソゴソしている
「モチロン用意してますよーン♪」
じゃーんと広げて見せてくれたのは5種類の水着
「どれがいいっスか?ボクとしてはこれが、あいやこっちも…いやむしろ全部着てみてほしいんスけど!」
「喜助の変態チックな趣味と、下心が見え見えじゃぞ」
「ていうよりなんか生地が少なくない?!」