第32章 もっと喜助さんが欲しい
「返事しろや」
「…いいの?私で」
「何遍も言わせんなや。返事は?」
「お、お願いします……」
その瞬間、平子隊長が琴乃を抱き締めた
「琴乃!おめでとう!」
「まさか目の前で熱い告白が見れるとは思いませんでしたよ。琴乃サン、よかったっスね」
「は、恥ずかしいから離れてよっ!」
「ツンデレなんやから」
「うるさい!」
なんか私のことを好きで居たときの平子隊長と大分違うな
なんだかんだ言って楽しそうな2人は、結構合うのかもしれない
私は喜助さんと顔を見合わせて笑った
「そんで、さっきそもそも…のあと何て言おうとしてたんや?」
そういえば2人は何の話しをしていたんだろう
「あれはっ…そもそも付き合ってないって…」
言おうとしたけど、その直後にこうなっちゃったし
「ほんなら解決やな。決まりやで」
「嫌」
「なんでや?何がアカンのや!?」
琴乃から出た言葉は凄く小さな声だった
「だって…」
「なんや?」
「だって、海で真子が他の女の子にモテモテだったら嫌だもん!」
海……?
「おまっ……急にデレるなやっ」
2人のやりとりを、喜助は微笑ましく眺める
「平子サン照れてますねー……紫苑?」
海か…
そう小さく呟いた紫苑の声は喜助の耳に僅かに届いていた
「大丈夫やて、お前しか見てへんて」
「ほんとに?」
「当たり前や」
「……行く」
「よっしゃ」
解決したらしい2人は落ち着きを取り戻して、いつ行くかとか話し合いをはじめた
「ごめん、ちょっと忘れ物取りに行ってくるね」
そう言って部屋を出ていく紫苑を見て、喜助は後を追った
ほんの少しだけど、浮かない表情をしていたのが気になっていた
その理由は多分外れていないだろう
「もしかして私…無神経なこと言っちゃったかも…」
現世の話しはなるべくしないようにしてきた
紫苑から聞いてきたときは話すけど、それ以外は基本私からは言わない
ましてや海なんて、浦原隊長と行きたいに決まってる…
それを、目の前で楽しそうに堂々と…
「なんや、悪いことしてもうたなァ…」
「紫苑大丈夫かな…」
2人が出ていった扉を眺めた