第31章 平子サンとは何を話したんスか?
「言わないでね?喜助さんだから、話すけど…」
「はい?」
「琴乃…平子隊長が好きみたい…今日は何も言わずに寝ちゃったけど…何かあったのかな…」
「ひょっとして両思いっスかね?」
「そう…だったらいいな」
着きましたよ、と喜助が立ち止まるのに間に合わず紫苑は少し足元がふらついた
長い梯子を下りるとそこには巨大な空間が広がっていた
「す、すごーい!!!双極の地下にこんな広い空間があったなんて!!」
「あぁ、紫苑!そのリアクション最高っス!」
作った甲斐がありますよォと満足げな喜助
「せっかくだから温泉でも入ります?」
「温泉?」
少し歩いた先にはホカホカと湯気をたてる、小さな温泉があった
「ってなんで早速脱いでるの!?」
「えー入んないんスか?」
「せ、せめて暗く…できないか」
明るいところではなかなか見る機会のない喜助の体に、紫苑は目のやり場に困る
「今度照明の調節機能付けとくから、今日はこのままで……ね?」
「ね?って…また可愛く言って…」
目尻を下げて寂しそうな顔をする喜助に心がきゅうんとなった紫苑は、渋々服を脱ぎはじめた
「あっち向いててね…」
「はいはい」
チャポン─と足を入れると不思議な感覚に陥る
闘いの時にできた細かなキズが消えていく
「驚いた?治癒効果があるんスよ」
「これも喜助さんが?」
「そっスよン♪まぁこれは真似てつくったやつなんスけどね」
本当になんでもできるんだなぁ、この人は
尸魂界一の科学者…って言っても大袈裟じゃない
そんな人の傍に居るのが私なんかでいいのかな
だって私は、何もできない…
何も持ってない…
「何考えてるの?」
「……喜助さんにとって私は必要なのか」
「必要だから、隣に居てもらってるんスけど」
即答の返事に驚いて、喜助さんを見るとふんわり優しい顔が迎えてくれる
「そっか、私必要とされてるんだね」
「紫苑の居ない生活なんて考えられない」
もっとこっちおいで
と体を引き寄せられる
「愛してる」
そう言って私の顔を自分に向かせて唇に触れる
「ん……」