第31章 平子サンとは何を話したんスか?
「喜助に言いづらいことか?」
「そう言う訳じゃないんですけど…」
紫苑はコソコソっと夜一に耳打ちした
「なるほど、じゃが断ったんじゃろ?」
「はい、でも言ったら喜助さん気悪くしないかなって」
「紫苑、あまり喜助に優しくしてやらんで良いぞ。調子に乗って発信器つけるとか言い出すぞ」
「発信器…?」
「つけられないように気を付けるんじゃぞ」
考え込む紫苑を見て、夜一は僅かな違和感を覚えた
…─
「ありがとうございました、夜一さん」
「じゃあまたの」
夜一さんに隊舎まで送ってもらって、別れた
喜助さんに帰ってきたことだけでも伝えておこうかな
技局にいるかなー
「なんだ紫苑か」
「あ、阿近。喜助さんいる?」
技局に入ると小さな鬼が迎えてくれた
「あぁ、局長なら奥にいるぜ」
奥へと歩みを進めると、画面に向かってキーボードを叩く喜助さんがいた
邪魔しちゃ悪いかな…
そう思って声をかけるのを半ば諦め、喜助さんの背中を見つめることにした
普段は喜助さんは局に、私は隊舎にいることが多いから、こうやって仕事をしている姿をまじまじとみるのは初めてだった
真剣な表情、時々頭を悩ませる仕草、キーボードを叩く細くて長い指…
「ねぇ、阿近。喜助さんてやっぱかっこいいよね…」
「なんだよ、話しかけないのか?」
「え、だって邪魔しちゃ…」
言ってる傍から阿近は喜助さんに近づいて話しかける
阿近に声をかけられて、こっちを向いた喜助さんと目があった
思わずドキっとする
キーボードから手を離して、席を立ってこっちへ喜助さんが近づく度にドキドキと心臓が脈を打つ
「声かけてくれればよかったのに」
「ん、見惚れちゃってた」
「またそんな可愛いことを」
お帰り
そう言ってギュって抱き締めてくれる
あぁやっぱり好きだなぁ
「そうだ喜助さん、発信器ってなぁに?」
「え」
喜助さんがバツの悪そうな顔をしたから、聞かないほうが良かったかな?って首をかしげると、喜助さんは顔をそらした
「どこで聞いたんスか」