第31章 平子サンとは何を話したんスか?
第31章 平子サンとは何を話したんスか?
「遅いっス」
隊舎の真ん前で腕を組み、人差し指を小刻みに動かしている喜助がいた
「隊長なんか機嫌悪くない?」
「あれじゃ怖くて隊舎入れないよ」
「西園寺さんが帰ってこないからじゃない?」
「え、でもまだそんなに、経ってなくない?」
「ほらこないだも、似たようなことあったじゃん」
珍しい喜助の様子に、下位の隊員たちは気づかれないようにコソコソと話をする
「ったく、書類配るのにどれだけ時間かかってるんスか…」
やっぱり付いていけばよかったっス…
だけど、紫苑に大丈夫って言われたし、それでもこれ見よがしに付いていこうものなら、嫌われるかもしれない…
けど、やっぱり心配だ
またどこかで動けなくなっていないだろうか
やらなきゃいけないことはたくさんあるのに、仕事が全く手に付かない
「帰ってきたらおしおきっスね」
喜助の発言に隊員たちは、紫苑に同情した
「西園寺さん、大丈夫かな…」
「隊長って束縛激しそ」
「依存してるよね…」
「隊員達が困っておるぞ」
いつから居たのか喜助の隣には夜一が立っていた
「夜一サン、何か用っスか?」
「御機嫌斜めじゃの。散歩しておったらお主の隊員達が隊舎の前で困っておったから寄ったのじゃ」
隊員たちは安堵の表情
今のうちに入れと、夜一は隊員たちを促す
「紫苑なら少し前に平子に捕まっておったぞ」
喜助は目を丸くする
「紫苑が危ないじゃないっスか!なんで助けてくれなかったんスか!」
「平子に紫苑を預けたりしといて、何を今更…。喜助、過保護も程々にせんと紫苑に嫌われるぞ」
こうしちゃ居られないと、五番隊に向かおうとしていた喜助はその一言で動きをとめた
「嫌われる…」
「いつの時代もしつこい男はあまり好かれんぞ?」
ニヤリと笑う夜一に、喜助はゴクリと唾を飲み込んだ
嫌われる…
紫苑に嫌われる…
"喜助さんなんか大嫌……っいッ……!!!"
以前紫苑に言われた台詞を思い出した
今でも胸が痛い