第30章 幸せを握りしめてるの
「どこにも行かないでね」
「行かないよ?変な紫苑」
遠くからその様子を喜助は、切ないような微笑ましいような目で見つめていた
「紫苑無事やったみたいやな」
「はい、ちょっと思い出に浸っていたみたいっス」
「ほんならええわ」
…─
「1人で大丈夫っスか?」
昨日のこともあって、紫苑を1人で書類配りに行かせるのさえ心配になる
「大丈夫大丈夫」
またどこかで思い悩まないだろうか
踞ってないだろうか
きっと仕事なんか手につかない
「子供じゃないんだから」
「そんなこと言ってるうちは子供なんスよ」
遠くからボクを呼ぶ局員の声
はぁ
とため息が出る
「はいはい。じゃあ行ってきます」
「気をつけてくださいね」
紫苑が見えなくなるまで見つめていたボクは、催促の声にようやくその場を離れた
…─
最後は五番隊っと…
書類を届けに来た紫苑は廊下で藍染に出会った
「やぁ、西園寺くん」
「藍染副隊長、平子隊長いらっしゃいますか?」
「それがまたどこかでサボってるみたいなんだ。申し訳ないけど、よかったら探してきてもらえないかな?今手が離せなくて…」
「分かりました」
「助かるよ」
五番隊を出て私はざっと辺りを見渡した
まぁ、目に入るところにいるわけないか
「藍染副隊長に心当たり聞いとけばよかった…」
霊圧を一応探ってみるけど、隊長さんたちはほとんど霊圧を消しているのか、探知能力が低い私にはさっぱりわからなかった
時間はあるし、のんびり探そ
と、手当たり次第に探し始めたけど、案外すぐに見つかった
「あ、いた」
五番隊の屋根の一番高いところに平子隊長はいた