第30章 幸せを握りしめてるの
「紫苑か、よォ此処がわかったな」
「なんとなくですよ」
ここ座り、とばかりに自分の隣をポンポンと叩く
そこに紫苑も大人しく座る
「昨日喜助がエライ心配しとったで」
「心配性なんですよ、最近特に」
「愛されてんなァ…」
その言葉にポッと紫苑の頬が赤くなる
その顔を見て、俺は心に溜まったモンを伝えることに決めた
「なァ紫苑…」
「はい?」
「こんなこと言うて、お前ンこと困らせるかもせーへんけど…いや、困りもせんと思うんやけど」
紫苑は平子が言おうとしていることが分からず首を傾げる
こんなときまで可愛えぇな、ォィ
「ただ、俺が気持ちスッキリさせたいだけなんやけど、聞いてくれるか?」
「…はい」
平子隊長は私の目をまっすぐ見て、少しの沈黙の後口を開いた
「紫苑のことが好きや」
びっくりした
もちろん平子隊長の気持ちには気付いていた
そりゃ最初の頃に惚れたって言われたし、その後も何かとそんな感じのことを言われたり、されたりしていたから…
だけど改まって言われた
私、この人に本当に好かれてたんだ…
「あの、私…」
「返事はえぇって」
「え、」
「言うたやろ、気持ちスッキリさせたいだけやって」
そんな告白があっていいのだろうか
告白するって多分、凄く勇気がいること
その勇気に私は答えなければいけないんじゃないか
それとも結果が分かりきってるなら、このままのほうがいいのか
紫苑の表情が冴えないことに気づいた平子は口を開いた
「あーやっぱり返事貰とこうかな……聞かせてくれるか?」
まァ返事は分かっとるけどなァ、なんて笑いながら言うから、ほんのり緊張の糸がほつれた
「ごめんなさい」
私も真っ直ぐ平子隊長の目を見て、伝えた
平子隊長がそうしてくれたように、せめてもの精一杯で答えようと思った
「ありがとなァ」