第30章 幸せを握りしめてるの
胸がきゅぅぅんと鳴るのを感じた
優しくしてね、なんて言われて可愛いと思わない奴がいるだろうか
「善処します」
ちょっといじめすぎた
少しずつ、少しずつ慣らしていけばいい
大丈夫、直にボク色に染まるから…
「なんか良からぬ事考えてない?」
「そんなことないっスよん♪それよりも…」
ドサッと音をたてて喜助はまた紫苑の上に覆い被さる
「ちょ、喜助さん?」
「今度はちゃあんと優しくしますから、ね?」
「いや、ね、とか可愛くて言われても…」
「嫌?」
捨てられた子犬のようなうるっとさせた瞳で見つめられたら
「嫌…じゃないけど」
「それじゃ遠慮なく♪」
「きゃぁぁ!」
…─
退院してからの私は体の調子も凄く良くて、前よりも仕事が捗って、なんていうかとりあえず、いい感じ
そして夏本番まであと少し
私と琴乃は揃って昇進した
「紫苑が八席かー」
「琴乃は七席でしょー」
「紫苑退院してから調子いいもんね」
「うん、入院してよかったのかも」
任命状を見つめながら話す2人
私よりも琴乃のほうが上なのは、やっぱり現世任務分かな?
それでも八席にまでしてくれた隊長に感謝しなきゃ
「紫苑ー」
「ひよ里さん」
ひよ里が若干息を切らしながらこちらに駆け寄ってくる
「ちょっと頼まれてくれるか?流魂街で虚が暴れとるらしいんやけど、今出払ってて」
「いいですよ」
「私も行くよ」
隣に居た琴乃をひよ里が制止する
「琴乃は別にやってもらいたいことあんねん」