第29章 あの人は、精神安定剤だから
騒ぎに騒いだみんなはついに卯ノ花隊長に見つかって、こっぴどく叱られた
でもなんとなくだけど、卯ノ花隊長も本気で怒ってるようには見えなかった
「じゃあウチらそろそろ帰んで」
「紫苑またね」
「ほなな」
卯ノ花隊長に見つかったのをきっかけにお開きになった
「うん、みんな本当にありがとう」
「喜助はどないすんや?」
「ちょっとだけ残ります」
「お疲れ様でーす」
みんなが部屋を出ていったあと、喜助さんと2人になった部屋で、ポツリと涙が頬を伝った
「紫苑?どっか痛む?」
その問いに紫苑は首を横にふる
「なんか、みんなが帰ったら寂しくなっちゃって」
喜助が優しく紫苑を抱き締める
「早くみんなのとこに戻りたい…」
「紫苑もみんなが大好きなんスね」
よしよしと子供をあやすように頭を撫でる
「私頑張って体治すね!」
「待ってるっスよ。退院したら何したい?それとも何か欲しいモノとかある?」
紫苑は即答した
「何も要らない」
その返事に喜助は驚いた
「ただ、喜助さんと一緒に居たい…」
この子はなんでこんな可愛いことを次から次へと言うんスか…
「そんなことで良いの?」
「そんなことが良いの。何もしなくてもいい。喜助さんと一緒に居る時間が、私の幸せで、大切な時間だって分かったから」
あー幸せすぎて、泣けてきそうっス…
「退院の日は休み取るね」
「ありがとう!」
優しいキスをして、喜助は病室を後にした