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With me

第29章 あの人は、精神安定剤だから



「アホか!」

「…」

「死にたいんか?どんだけ心配したと思てん…!」


聞きなれた叱責のはずなのに、心に痛く刺さった


「自分の身体もっと大事にせなアカンやろ!」

「ちょっとちょっと平子サン、それくらいにしておいてくださいよ」


時間差で再び会いにきた喜助が紫苑を守るように包む


「喜助…俺は紫苑の為に言うてるんや!」

「だからぁ、昨日から虎徹サンと琴乃サンとひよ里サンにたっぷり怒られたんですって」


普段ほとんど怒られるようなことがない紫苑には、大分堪えただろう


「だからね、あんまり怒らないであげてください…ってあーもうほら、泣いちゃったじゃないスかぁ」

「喜助さぁん…っ」


喜助さんの優しさに涙が出て甘えてしまった


「ご、ごめんやて!紫苑のことが心配で言いすぎてしもたな…許したってや…」

「もういいっスから、平子サンは仕事に戻ってください」

「…ホンマにスマン…紫苑」


申し訳なさそうに平子は背中を見せた


「落ち着いた?」

「ごめんなさい、私…」

「よしよし。もう泣かないの」


喜助さんの手は、いつもあったかい


「ボクすぐ行かなきゃ。来るの遅くなってごめんね」

「わざわざ来てくれたの?」

「そりゃあ紫苑に会いたかったっスからぁ」


自分でも顔が熱くなるのを感じて思わず下を向く


「ありがとう…喜助さん」

「顔あげて…」


反射的に顔をあげると目の前が喜助さんでいっぱいになった

唇に柔らかい感触

短いキス


「もぅ……」

「照れちゃって。じゃあまたね」


愛されてる

ってだけで、こんなにも心が暖かくなって凄く落ち着く


喜助さんはまるで、私の薬みたい




…─




喜助さんは、お昼は時々、仕事終わりは必ず会いに来てくれた

でもやっぱり忙しいのか、すぐにまた仕事に戻っちゃうけど

それでも本当に毎日来てくれて、本当に嬉しかった


入院と言っても、寝たきりでもなければ特に制限があるわけでもない

入院というよりは療養といった感じ

あ、でも散歩は必ずしてって言われたかな

気分転換になるからって

貧血はもうすぐ生理が終われば落ち着くし、胃炎は…どうかな
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