第29章 あの人は、精神安定剤だから
「で、どうなの?」
しばらくあーうーと唸っていた琴乃は、観念したようにため息を吐いた
「……好き…だと思う」
「そっか」
ちょっとホッとした
工藤さんが好きだった琴乃
だけど、その工藤さんは私を好きだと言って、亡くなってしまった
琴乃がまた、恋ができるのか心配だった
「も~自分でも分からないのっ。私いつから好きだった?どうしてあんな冷たい態度とっちゃうの?ていうか平子隊長は紫苑のことが好きなのに…」
まぁこないだ諦めるって言ってたけど…
「なんか、ごめん…」
工藤さんといい、平子隊長といい…
「いや、紫苑は悪くないんだけどさ…」
「悩んでるのね」
「…平子隊長が、東園寺さんと仲良くしてるの見ると、なんかモヤモヤして…本人の前で上手く話せなくなって…」
久しぶりに見た、琴乃の恋をしている顔
凄くかわいい
「素直になったら?平子隊長も心配してたよ」
「…努力します」
「私は2人、お似合いだと思うよ」
「~うるさいっ」
照れながらじゃあまたね!っと慌ただしく部屋を出ていった
「上手くいくといいなぁ」
…─
琴乃から少し時間をおいて、今度はひよ里さんが来てくれた
「アホか!」
「へ?」
「へ?やないで!病人やからここに居るんやろ?抜け出すてなんやねん、えぇ度胸しとるなァ。死にたいんか?」
なんかさっきも似たような会話を…
「ごめんなさい…」
「分かればえーんや、分かれば」
隣のイスにでーんと座るひよ里さん
なんか2人は似てるなぁ
「で、喜助とは仲直りしたんか?」
「はい…なんで知ってるんですか?」
「みーんな噂しとったで。東園寺が喜助と紫苑別れさせたとか、喜助のこと寝取ったとか…」
「大げさですよっ」
そうなんか?と疑問系で返すも、人の色恋にそこまで興味がないひよ里は明後日の方向を向いている
「まァゆっくり休み。ちゃあんと治して帰ってくるんやで?」
「ご迷惑おかけします」
「迷惑なわけないやろ」
ニタァっと笑って休憩時間が終わるから、とひよ里さんも帰っていった
口は悪いけど、ひよ里さんは優しい
優しくて強くて…大好き