第29章 あの人は、精神安定剤だから
びっくりした
夜一サンに頼んで、二番隊に彼女を異動させようと思っていた矢先、彼女から異動の希望を出されるとは…
「…いいんスか?」
「貰ってくれる隊があるか分からないですけど…」
「それなら、良い所がありますよ」
彼女からの申し出ではあるけども、元々ボクの一存で彼女を異動させようとしていた
褒められた行動ではないけれど、ボクは隊長の座を追われたって紫苑のほうが大事だ
「良い所…?」
「今度、連れていきますね」
…─
紫苑の病室─
勇音さんに入院の話しをされて、喜助さんが様子を見に来てくれて、1人になったらこれからの生活が少し不安になってきた
そんなとき
バタバタバタっと分かりやすい足音が聞こえたと思ったら、バーンッと勢いよく扉が開いた
そして足音の主は、紫苑にズンズンと向かってきた
「琴乃…」
「このバカッ!」
「へ?」
叱られるとはもちろん、思っていたけどバカなんて言われると思わなかったから、びっくりした
「へ?じゃないでしょ!夜中抜け出したんだって?私が止めたのに。あんた自分の体わかってんの?死にたいの?もっと考えて行動しなさい!」
「ごめんなさい…」
分かればいいのよ、分かれば。と隣の椅子にどーんと腰かける
「で、なに?入院するの?」
喜助さんから聞いたのかな
「うん、1ヶ月くらい」
「そっかぁ、寂しいなぁ…仕事サボってきちゃおうかな」
「サボっちゃだめだよ」
私はサボりじゃなくて、入院なの。と言い返す
「待ってるから早く治してきなね」
「ありがとう。…あのさ琴乃」
「なぁに?」
「前から聞こうと思ってたんだけど」
「うん」
「単刀直入に聞くけど…平子隊長のこと好きなの?」
沈黙が流れた
というより言葉が出なかったのほうが合いそう
「な、ななななんで?!」
「私喜助さんしか好きになったことないけどさ、なんとなく分かるよ?」
「うそ…」