第29章 あの人は、精神安定剤だから
「それで、西園寺さん。今後のことなんですけど…」
紫苑の身体を大体診終わった勇音は、言いづらそうに口を開いた
「本当は卯ノ花隊長から説明するはずだったんですけど、急用が入ってしまって…私が」
「うん。話しって何?」
「あの、しばらく四番隊に入院しませんか?」
「入院?」
紫苑の目が開いた
「なんで?だって身体はもう大丈夫でしょ?」
「西園寺さんは、精神的なストレスが身体に出やすいです。最近頻度も多いですし…しばらくウチに入院して、身体の調子を整えませんか?」
「…そんなにひどい?私」
「ひどくならないようにするんです。しばらく同じ環境にいれば、身体も心も今よりは安定すると思います」
紫苑は俯いてしまった
やっぱり嫌なのだろうか
心配そうに覗き込む勇音
「西園寺さん…」
「入院てどのくらい?」
「はっきりは言えませんが、大体1ヶ月くらいかと」
「1ヶ月か……喜助さんに…隊長に聞いてからでもいい?」
ダメ、とは言えなかった
本当は半強制的な入院なのに…
あの人は、西園寺さんの精神安定剤だから
「分かりました。お返事待ってます」
部屋を出た勇音は通常業務に戻った
始業の鐘が鳴ったのと時を同じくして、紫苑の病室の扉が開いた
「おはよう紫苑、具合どう?」
「おはよう喜助さん。悪くないよ」
喜助さんが居るだけで自然と笑顔になる
「それで、お話はなんだったんスか?」
「…しばらく入院しないかって」
「入院?」
紫苑は勇音に話されたことを喜助にも伝えた
「そっか…寂しいっスけど、しばらく四番隊でゆっくりしておいで」
「…嫌じゃないの?」
「そりゃ嫌っスけど、苦しんでる紫苑を見るのも辛いんスよ?」
私は喜助さんに抱きついた
「離れたくない……一緒に居たい……」
「退院したら、また一緒に居れるよ」
「でも入院中に喜助さんがあの子にまたキスされちゃうかもしれない…」
「あぁ、それは大丈夫っスよ」
「どういうこと?」
何が大丈夫なのか、そもそもそんな隙があるからそんなことをされるのであって…