第29章 あの人は、精神安定剤だから
『あの、卯ノ花隊長…あのこと、西園寺さんに今日言わなくて良かったんですか?』
『明日でも問題ないでしょう?』
『でも、今すぐにでも西園寺さんには、もう少し自覚を持って貰ったほうが…身体のほうが持ちませんよ…』
『今日はもうお疲れでしょう。顔色も良くありませんでした。まずは休ませることのほうが大事です』
『はい…』
『勇音。御自分で分かっていると思いますが、あのような言い方は、西園寺さんの負担を増やすだけです』
『申し訳ありません…』
『親しい西園寺さんを想う余り、感情的になってしまう気持ちは分からなくはないですが、あなたがそれをしてどうするのですか?』
『……』
『自覚を持つのはあなたも同じですよ、勇音』
『…明日、改めて西園寺さんに謝ります…』
『今日はもう上がりなさい』
ため息まじりに出てくる彼女と目があった
「浦原さん…」
「お疲れ様っス」
「聞こえてましたよね?今の…」
「えぇ、まぁ…」
と喜助は苦笑いした
「すみませんでした…私、西園寺さんが心配で…」
「いえ、謝ることないっスよ。紫苑もきっと、心配してもらって嬉しいと思います」
「浦原さんは優しいですね」
「いえ、逆にボクはなかなか厳しくはできなくて…」
勇音は小さく笑った
「これからも紫苑のこと、よろしくお願いしますね」
それじゃ
と喜助は勇音と別れた
紫苑への話がなんなのか聞こうと思ったけど、なんとなく聞けなかった
悪い話じゃないと、いいんスけど…
明朝─
「おはようございます。西園寺さん…」
部屋に入ってきた勇音さんが、みるからに元気がない
昨日のことを気にしているんだろうか
「おはよ、勇音さん」
「あの、昨日はごめんなさい。本当に」
当たりだった
「ううん。怒られて当然のことをしたんだから」
「2人とも優しいんだから…」
「2人ともって?」
なんでもないです
と、ニコッとして、勇音は紫苑の身体の状態を確認し始めた