第28章 喜助さん…ごめんなさい
「そんな……だって見たもん!2人がキスしてた!その前に、喜助さん東園寺さんに目閉じてって…じっとしてって!」
「紫苑、落ち着いて…」
呼吸が荒くなる紫苑の背中をさする
「そんなの東園寺さんからに決まってるじゃん。紫苑と隊長の仲を邪魔したかったからでしょ。あの子紫苑がいるの分かっててやったんだよ」
「…喜助さんからしたんじゃないの?」
「そうだよ。隊長ずっと紫苑のこと心配してたんだよ」
私…喜助さんに酷いこと…
「私、嫌いって言っちゃった…」
「本当に嫌いなの?」
紫苑は首を横にふる
「嫌いなわけない……好き、大好き」
「隊長今頃ショック受けて落ち込んでるかもね」
「私、喜助さんに謝らなきゃ……っ……」
「まだ寝てなきゃなんだから明日にしなって…」
「探してくるっ!」
「ちょ、紫苑!」
瞬間、目の前が真っ白になった
「ちょ、ちょっと東雲さん!病人に白伏なんて使わないでくださいよ!」
「あっ、ごめんなさい!つい」
「つい、じゃないですよ!私が卯ノ花隊長に怒られちゃうじゃないですか!」
「ほんっとごめんなさい!」
珍しく声を荒げる勇音に琴乃はただひたすらに謝った
…─
また気を失っていた…
気を失う前に一瞬目の前が真っ白になった
きっと琴乃が白伏を使ったんだろう…
外を見るともう月が高いところにあった
満月だった
それはまるで
そう確かに
大好きな喜助さんの髪の色に似ていた
「喜助さん…会いたい」
新しくなった伝令神機から、たどたどしい操作で喜助にかける
「出ない…」
気付いたら部屋を飛び出していた
神経を集中させて、喜助さんの霊圧を探る
「なんとなく向こうかな…」
霊圧を基本閉じている喜助さん
その霊圧を追えたことはほとんどなかった
喜助さん…
喜助さんどこ…
「きすけさん…会いたいよ」
1人で歩く夜はこんなに暗かった?
1人で歩く夜はこんなに寂しかった?
いつも、あなたが居てくれたから
血が足りないのかクラッとする
喜助さんを探したいのに、思わず座り込んでしまう
虫の音しか聞こえない
座っても頭がグルグルする