第28章 喜助さん…ごめんなさい
「紫苑と何があったんですか?」
「……」
「湯飲み割ったり、駆けつけるの躊躇したり…倒れて先輩に抱きついたくらいじゃ、隊長そんな表情しないでしょ…」
琴乃サンという人は、意外と人のことを見ている
「実は…」
…─
「あんのクソ女ァ!耳の穴から割箸入れて奥歯ガタガタ言わせてやる!」
「琴乃サン…なんか平子サンみたいっスね」
喜助は額から嫌な汗が流れるのを感じた
そういえば平子隊長…昨日のこと、どう思ったかな…
悩み事が尽きない…
とりあえず今は
「隊長!それ絶対紫苑勘違いしてるから、絶対誤解解かなきゃダメですよ!」
「は、はい」
琴乃の圧に思わずたじろぐ
「ん…」
「「紫苑!」」
目を開けたらまたか、と思うくらい見慣れた天井と、琴乃と喜助さんの顔があった
「私…」
「貧血で倒れたんだよ」
貧血…そうだ、貧血なのに走って…
くらっとして、それで確か先輩に…
私なんで走ってたんだっけ…
「紫苑…大丈夫?」
「き……すけ…さ……!」
思い出した…私が走ってた理由
思い出したくない
消えて欲しい
忌々しい…
吐き出したくなるくらい
「うっ……かはッ……」
「紫苑!」
嘔吐してしまった紫苑の背中を琴乃がさする
息を整える紫苑の目からは涙がこぼれる
「出てって…」
「紫苑、聞いてください」
「喜助さんなんか大嫌……っいッ……!!!」
胃のあたりをおさえてベッドに寝転ぶ紫苑
「紫苑…ごめんね」
ボクはここに居ないほうがいい…
そう思って部屋を後にした
「ちょ、隊長!」
「っ……!」
「紫苑大丈夫?今四番隊の人呼んであげるから」
胃炎て、お腹痛い?
胃が痛いのか?
かわってあげたいよ…
痛がる紫苑を見てられない…