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With me

第28章 喜助さん…ごめんなさい



彼女からお茶を受け取り一口飲むと、いつもよりも深いため息がでた


「隊長おつかれですか?」

「ん、いや今日夜中に呼び出されたんスよ」

「疲れた時には甘いものが一番ですよ♪そうだ、こないだ好きだって仰っていた羊羹も作ってきたんです!」


ちょっと待っててくださいね、と彼女は扉に向かう


「その辺危ない薬品とか多いんで、気をつけてくださいね」

「大丈夫で……きゃっ」

「危ない!」


振り向いた彼女の手が棚の小瓶に触れる

簡易な封しかしていなかったそれは、彼女の顔にかかってしまった


「大丈夫っスか?!」

「だ、大丈夫ですよ!これくらい」


そういって彼女は何事もなかったかのように立ち上がる

ボクは思わず彼女の手を引いた


「ここ座って」

「は、はい」


質素な応接ソファに座らせると、喜助は棚からいくつかの薬品を持ってきた


「すみません、ボクがちゃんと管理していなかったから…」


幸い彼女にかかった薬品は強いものではなく、皮膚が赤くなるだけですんでいる

一番赤いのは右目の瞼だろうか


「謝らないでください。私がドジなだけですから」

「眼球じゃなくてよかった…」


喜助はピンセットで綿をつまんで、薬品を染み込ませていく


「あっ」


薬品が皮膚に触れるとその痛みで、さすがに彼女も身がすくむ


「じっとして…」

「…っ…あっ…」


どうしよう…

隊長が近い…

こんなに近いの初めてで胸がうるさい…

ずっとこの距離に居れたらいいのに


その時扉の向こうにひとつの霊圧を感じた


凛音は唇を噛み締めた


「隊長…」

「目、閉じて…」


薬を塗られるだけなのに、ドキドキする

薬が染みてヒリヒリする


「あ、だめです……ゃ…」


この人が欲しい…


痛みが落ち着いて、薬を塗り終わったとなんとなくわかった

ゆっくり目を開けると、皮膚の様子を確認する喜助の顔がすぐ傍にあった


「これで綺麗に治ると思います」


ねぇ、西園寺さん…

ちょっとくらい…いいですか?


凛音の顔は自然と喜助に近づいていった

喜助の唇と、凛音の唇がそっと重なった


「なっ…」


開かれる扉

そこに立っていたのは、紫苑だった


「紫苑!?」

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