第28章 喜助さん…ごめんなさい
「紫苑、もしかして生理とか?」
「……」
座っているのにクラクラする
頭の中がぐるぐるして、琴乃がなにか言ってるのは分かるけど返事ができない
「薬飲んだ?」
かろうじて聞き取れた言葉に首をふる
「なんで飲んでないの?早く飲まなきゃ!」
「……切らしてて」
「じゃあ貰いに行かなきゃ!ていうか貰ってきてあげるから休んでな!」
琴乃に付き添われてなんとか自分の席へと着く
はぁーっと一息つくと、隊首室から喜助さんの声が聞こえた
そういえば早朝に呼び出されてたなぁ
ていうか今日お弁当作れてないや…
それだけでも伝えとこ
そう思って隊首室の扉に手をかけた時だった
「…私が……な………ですから」
胸がザワついた
抉られるような、なぞられるような…そんな
取手にかけた手を思わず引っ込める
喜助さん、あの子と一緒に居るんだ…
「あっ」
なに、今の声…
「じっとして…」
「…っ…あっ…」
明らかな喜助さんの声と、まるで喘ぐような彼女の声
「隊長…」
「目、閉じて…」
「あ、だめです……ゃ…」
耳を、塞ぎたくなるような二人の声
数秒の沈黙…
耐えきれずに扉を開けた
2人の唇が、重なっていた
「紫苑!?」
頭が真っ白になった
気づいたら走り出していた
夢だ
これはきっと夢だ
悪夢を見ているんだ…
だからお願い…覚めて…
視界がぐらんぐらんして、走っているのか歩いているのかさえわからない
胸が苦しいよ…
意識が遠くなる
「西園寺さん!?」
倒れたのを抱き止めてくれたのは、いつかの現世任務の時一緒だった先輩だった
怖くないわけじゃない
本当はすぐにでも離れたい…
けど、頭がクラクラしてそれどころじゃない
動きたくても動けない…
力が入らない