第26章 気づいたら、体が、顔が勝手に…
「羽織くらい別にエェやんけ」
平子の羽織を取り去って、自分の羽織を掛け直す
「だってなんか平子サンに抱き締められてるみたいじゃないっスか」
「考えすぎやろ…」
「午後は特に何もなかったっスか?」
「ん……あァ…………ないで」
「なんスかその間は?」
なかったといえばなかった
「寝言で喜助のこと呼んでたで」
「え!ほんとっスか?」
ほんのり頬を赤らめてって、男がしてもかわいないけどな
「あと東園寺やったっけ?あれと一緒に居んの見るのが辛いって言うとったで」
それを言うと喜助は黙ってしまった
やっぱ言わへんほうがよかったか?
「平子サン、ボクどうしたらいいと思います?」
「はァ?」
「別に彼女に特別な感情は何もないっスよ?でも彼女、以前紫苑に嫌がらせして…またいつ紫苑を傷つけるか分からないんス」
「ほんで?」
「ボクが彼女に冷たくしたら、紫苑に何かされるんじゃないかって…」
その気持ちは分からんでもない、けど
「アホか」
「はい?」
「紫苑泣かしてまでソイツのこと気にしなアカンのか?沙也加ん時の勢いはどうしたんや?あんまし紫苑のこと泣かすんやったら、ホンマに五番隊に貰うからな」
「…善処します」
「守ってやれや」
喜助は紫苑を抱き上げると、平子に礼を言って五番隊を後にした
"紫苑泣かしてまでソイツのこと気にしなアカンのか?"
良いわけない
紫苑に泣かれたら…ボクが辛い
大切にしてあげたいのに
ボクには紫苑しかいないのに
ボクは間違ってるんスかねぇ…
腕の中で眠る紫苑の顔が、どことなく寂しそうに見えた
…─
目が覚めたら喜助さんの部屋だった
台所に立つ後ろ姿が見える
ご飯を作ってくれてるんだろう
「きすけさん……」
ちょっといじわるで小さい声で呼んでみる
「あぁ、起きた?」
なのにすぐに、気づいてくれる
「もうすぐできるっスからね」
布団から出ると眠気でまだ上手く立てないけど、よろよろと台所に向かう
ぎゅう…
「紫苑?」