第26章 気づいたら、体が、顔が勝手に…
「じゃあ紫苑、仕事終わったら迎えに来るね」
「うんっ」
3人が帰ると紫苑は平子に向き直った
「琴乃のお弁当どうでした?」
「ん、あァ旨かったで。意外やったわ」
いや、正直旨かったどころやない
胃袋を捕まれるとはこういうことなんか…
「また作ってくれって言うといてや」
「琴乃よろこびますよ!」
午後も目が覚めてしまって、結局平子隊長の仕事のお手伝いをさせてもらった
今頃喜助さんはあの子と何してるのかなぁ…
「心配せんでも喜助は紫苑にゾッコンやから、自信持ったらええねん」
「ええええ、えすぱーですか?!」
「見とったら分かるわ」
「だってあの子ふわふわしてて可愛いし、料理もできるし、色目だって使うし…」
そりゃちょっと嫌がらせされたけど…
「そんなエェ女なんや?」
その言葉で紫苑の目はまたうるうるし始めた
「い、いや紫苑のほうがめーっちゃエェ女やで?」
「ありがとうございます…」
「そないな女に負けんなや」
「あの子喜助さんにベッタリで、隊舎にいても2人が目に入っちゃって辛くて…だから正直今日は、平子隊長のとこに居れて久しぶりに落ち着きました」
そんなこと言われたら帰したくなくなるやんけ
「辛なったらいつでも此処来てええねんで」
「平子隊長は優しいですね」
「元からや」
クスクスと笑いあって、久しぶりに落ち着いた1日だった
…─
夕刻、終業30分前─
静かになったなと思った紫苑は、ソファで寝息をたてていた
羽織をかけてやるとくすぐったそうに身動ぐ紫苑
「きすけ…さん……」
寝言で呼ぶくらい好きなんか…
キリッと胸が痛む
エェ加減俺も諦めんとやな…
…─
「おつかれっス、平子サン」
「喜助か、紫苑寝とるで」
紫苑の傍にしゃがんで頭を撫でる顔が、他の誰にも見せへんような、優しい顔で、やっぱり紫苑は喜助の大切な奴なんやて…思った
「とりあえずコレ邪魔っスね」