第26章 気づいたら、体が、顔が勝手に…
そこにツカツカと凄い剣幕で近づいてくる女性
「ちょっと!私別れるなんて一言も言ってないんだけど!」
パァァんッと気持ちのいい音が響く
「ったぁ…勘弁してよ。俺はもう西園寺さん一筋なの」
「西園寺さんて誰よ!この浮気者!」
なんやめんどいことになりそーや…
こっそり戻ろか…
隊首室に戻ると紫苑が駆け寄ってきた
「あの、ありがとうございました」
「エェって別に。モテるんも大変やな」
「私呼び出されること多くて…喜助さんに男の人と2人きりになるなって言われてるんです」
「俺はエェんか?」
「あ、平子隊長は大丈夫です。私が」
アカンわ…
俺かて男やで
今ここで紫苑のこと押し倒して唇奪うかもしれへんで?
平子の目につやっとした紫苑の唇が目にはいる
なんやねんその…キスしてくださいみたいな唇は…
キョトン?とした紫苑にハッとした
「…そろそろ寝とき」
その言葉に紫苑はソファで遠慮なく横にならせてもらってる
なんだか朝から胃がキリキリするし、有難い
コンコン─
「隊長よろしいですか?」
「惣右介か」
「あの書類なんですが」
「できてんで」
驚きを隠せない藍染はその場に立ち尽くしていた
「珍しいですね」
「今日はここに居らんといけんのや」
ふと、藍染は違和感のあったソファに視線を移す
「やっと寝たんか」
平子は立ち上がると、自分の羽織を脱いで紫苑にかける
「誰です?」
「喜助の彼女や」
「あぁ、浦原隊長が溺愛と噂の西園寺くんですか」
「そんな噂あるんか…」
なんでここに?という問いに、まァ色々あるんやと適当に答える
「仕事してくれるなら助かります。失礼します」
無防備な寝顔やなぁ
…気づかれへんかったらエェやろか
ふに
と紫苑の唇を触る
思った通りに柔らかい感触に、柄にもなく心臓が早まる
気づいたら、体が、顔が勝手に…
アカンて、やっぱやめよ…
一瞬で色々なことがよぎって…
ヘタレやな、俺
そしてまた書類に向かう