第26章 気づいたら、体が、顔が勝手に…
「ちょ、やめや!」
「黙ってください!平子隊長!男にはやらなければいけないときがあるんです!」
みるみる紫苑の瞳が潤っていく
「とりあえず手離しィ」
平子の腕が彼の腕を掴んで引き剥がす
「ちょ、平子隊長!」
紫苑は自身の手を引っ込めて、胸元でぎゅっと握りしめる
「西園寺さん!話があるので裏に来てください!」
彼がなんて言ってるかわからない…
怖い…
「じゃあ俺先行って待ってますから!」
彼が慌ただしく走り去っていく
「ウチのがごめんな。いけるか、紫苑?」
近づくとクッションを抱き締めている体が、小刻みに震えている
しゃがんで目線を合わせてやると、キュと平子の羽織を掴む
な、なんやコレ…可愛いすぎるやんけ…
俺は平気なんか?
アカンわ、優越感
喜助のムフフの気持ちがめっちゃわかる
荒い息を整えながら握る手に力が入る
「あ、の…彼なんて?」
「ん、あァ話があるから裏に来てくれって…」
「お願いがあるんですけど…」
…─
隊舎裏─
「なんで平子隊長がいるんですか?!」
「しゃァないやろ」
「これじゃ隊首室と一緒じゃないですか!」
なんの為に呼び出したんだか…とブツブツ文句を言う彼
エェからはよせぇと急かされ渋々話し始める
「あの、俺西園寺さんに一目惚れしたんです!俺と付き合ってください!絶対幸せにします!」
深々と頭を下げて手を差し出す彼
「友達からでもいいんで!」
紫苑の斜め後ろに立つ俺の羽織を、後ろ手にぎゅっと掴んどるのは俺しか知らん…
なんや、俺…彼氏みたァやな…
思わず緩む口元を咄嗟に隠す
「あの、ごめんなさい!!」
「え!西園寺さん!待って!」
一目散に走り去る紫苑を反射的に追いかける彼
その行く手を阻む平子
「ちょ、隊長!邪魔しないでくださいって!」
「アカンわ、紫苑のことは諦めたってくれや」
「も、もしかして平子隊長、西園寺さんと?」
「ちゃうわ、紫苑の彼氏は…」