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With me

第25章 あの子ばっかり…



バタバタバタッと廊下を走る音が聞こえる


「お静かにお願いしますね」


という叱責の声も聞こえる


「ス、スミマセン」


という謝罪の声も聞こえる

そのすぐあとで、スパーンっと勢い良く病室の扉が開いた


「紫苑!大丈夫?」


珍しく息を切らした喜助さん


「じゃあ私は失礼します」


空気を読んだように部屋を出る勇音さん


「言わなくていいって言ったのに、京楽隊長…」


布団を被り、喜助に背を向けるように向こうを向いた


「なんでそんなこと言うんスか」

「本当に大したことないし」

「そんなのわからないでしょう?」


語尾がキツくなる

私は我慢できずに本音を溢した


「あの子の相手で忙しいでしょ」


喜助の心臓が揺れた


「デレデレしちゃって…ずっと話してるし…私なんか構ってくれないし」


あー私何言ってんだろ

こんな可愛くないことばっかり言って

あの子のほうが素直で人懐こくて…


「紫苑…」


もう言いたくないのに言葉が止まらなくて


「全然帰ってこないし…1人で眠るのは寂しいし…」

「紫苑…ごめん…」


私思っていた以上に溜まってたんだ……


ぎゅと喜助さんに抱きつくと、喜助さんは少し驚いた


「さみしかった…」


ボクの腰に手をまわして充電、と言ってすぅっと息を吸っては吐く紫苑

やっぱり落ち着く


「そんなことされると、ドキドキしちゃうんスけど…」

「ここに来て…良かった」


どうして?とさっぱり分からないという顔で紫苑を覗く


「喜助さんが来てくれたから…」


キュンと胸を打つ台詞に、ボクは紫苑はぎゅっと強く抱き締める


「さみしくさせちゃったね」

「…うん」

「妬いてたの?あの子に」

「……うん」


小さく縦に揺れる頭

腰にまわした手に力が入る


あぁ、なんて可愛いんだろう…


「ボクが好きなのは、紫苑だけだよ」

「ん、私も」


紫苑の頬を両手で覆って優しいキスを落とす


「でも最近ちょっとあの子と居すぎ…」

「困ったなぁ…どうしたら機嫌なおしてくれる?」


紫苑は下を向いて、少しムスッとした顔で考え込んだ


「じゃあ…今度どっかお出かけしよっか」

「ほんと?」

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