第25章 あの子ばっかり…
さっきまで雲がかっていた彼女の瞳はパァッと光を灯した
「どこか行きたいところある?」
「お花見!」
「お花見かぁ、いいっスね。あと一週間くらいすれば見頃っスね」
「私お弁当作るね!」
楽しみにしてます、と言って紫苑の頭を抱き寄せる
「今日は一緒に寝ようね」
「うん!」
…─
「喜助の奴め…儂をなんだと…」
夜一の手には、十二番隊の隊服を着た女が居た
喜助が紫苑の病室に着く少し前─
喜助の隣を嬉しそうに歩く凛音
「喜助が浮気…な訳ないか」
通りがかりに見かけた夜一は、喜助のほんの少し漏れる困った顔が気になって、しばらく様子を見ていた
すると突然意識を失うように、倒れ込む女
そして申し訳なさそうに、ヘラヘラと儂を見る喜助
「気づいておったのか」
ストンと喜助の近くに下りると、ハイッと女を渡された
「なんじゃ…藪から棒に…」
「ボクちょっと急ぐんで、その子十二番隊に運んどいてください」
「は?おいっ…喜助…!」
「後でちゃんと説明しますから!よろしくっス~」
腫れ物が取れたような顔で、喜助は足取り軽く走り去っていった
「喜助の奴め…儂をなんだと…」
眠らされただけのようじゃ…
渋々夜一は十二番隊に向かった
「おー琴乃、ひよ里!丁度良かった」
「夜一さん!…と、東園寺さん?」
ドサッと琴乃に凛音を渡すと、近くに腰をかけた
「隊長と行ったはずじゃ…?」
「喜助に渡された」
「そう、なんですか」
「話しが見えん。なんじゃ、その女」
そこにひよ里が気だるそうに近づいてくる
「東園寺凛音。喜助に気があるみたいやで」
「ひよ里さん」
「紫苑の見舞いに行く喜助に無理やり着いていって、喜助に厄介払いされたってところやな」
隊員たちの話では
「見舞い?紫苑は大丈夫かの?」
「リサさんに聞いた話では、少し喘息症状が出たけどもう落ち着いてるらしいですよ」
「そうか。無事なら良い」
そう言って夜一は瞬く間に姿を消した
「隊長に付いて、紫苑のお見舞いに行くって…何考えてたんでしょうね」
「紫苑に一緒に居るとこ見せつけたかったんやないの」
「…嫌な女」