第24章 私の喜助さんに触らないで
「まさか、知らないワケないっスよねぇ?」
局長の顔が見れない
額からは冷や汗が垂れる
「大切な彼女を傷つけられて、ボクが黙っているとでも?」
「す、すみませんでした…!」
思いの外呆気なく頭を垂れた男に、喜助は驚いた
「俺、ずっと凛音が好きで…やっと、やっと同じ空気を吸えるようになったんです。だから、凛音が望むのなら…って」
「知ってますよ。昔、散々聞かされましたからね」
ボクを見かけては、流魂街に置いてきた幼なじみの話を延々と聞かせ
様子だけでも見てきてほしいと懇願され、錆面に立ち寄った
そこで見た彼女はボロボロだったけど…
「ボクがどんな男かも、知っているでしょう?」
「…え…」
「彼女と同じ空気を吸えるようになったのは、誰のお陰だと思ってるんスか?」
「あ…ぃや…それは…」
喜助はスゥ…っと男の耳元で囁いた
また、あそこに戻りたいっスか?
冷酷な声音
男は必死に首を横に振った
その姿を見て喜助はニヤリと笑い、パソコンを操作し、記録媒体のデータを完全に消去した
印刷された写真もその場で燃やした
「え…局長…?」
「紫苑が大事にしたくないみたいなんで、今回は見逃してあげます」
次は無いっスよ
「は、はいっ」
満足そうに喜助は部屋を出た
男には手荒なことはできても、女性となると話は別だ
もちろん紫苑を傷つけるような女性は、女性であっても容赦はしないけど、紫苑がそれを望んでいない…
ボクは今まで通りに、東園寺サンに接することにした
また紫苑に何をするかわからない…
極力は彼女の機嫌を損ねないように心掛けた