第24章 私の喜助さんに触らないで
ゾクッとした
背中を冷たい何かでなぞられているような…
だって、あの写真に映っていたのはもちろん私だけど
あの写真を送ったのが私だってことは、西園寺さんは知らないはず…
なのに何で…
「あ、これ良かったらあげる」
凛音の手のひらに飴玉をひとつのせる
「じゃあね」
声も出なかった
手のひらの飴玉を強く握った
何よ何よ何なのよ!
なんとも思ってないみたいな顔しちゃって
彼女の余裕?
いやきっと、強がってるだけだ
でもなんか…ムカツク…
…─
凛音から見えなくなったところで紫苑は胸を抑えた
感情…漏れてなかったかな…
上手くできたよね?私…
本当は心の中はぐちゃぐちゃだった
真っ黒で汚い心が、漏れないように
必死に取り繕った
大丈夫
私は喜助さんの彼女
大丈夫
堂々としてればいい
…─
パソコンに向かってキーボードを叩く男
目を見開きながら何かを必死に探している
「おかしい…」
誰かが自分のパソコンに触れた?
頭にいくつかの可能性を浮かばせる
あの時邪魔が入って、証拠の写真や通信記録を消すのがすっかり遅くなってしまった
自分は手を加えていないのに、証拠の数々がデータ上から消えていた
「凛音にこんなことができるとは思えないし…」
該当のデータだけが消えている
システムトラブルなんかでもなさそうだ
録霊蟲の対策はしてあったし、他には…
「お探しのものはこれっスか?」
バッと振り向くと、壁に寄りかかった男がいた
「局長…!」
その手には、西園寺紫苑に送った写真と、自分と凛音がパソコンを操作している写真
それから、そのデータが入っているであろう記録媒体…
「どうして、それを…」
「此処一応ボクが創った施設っスからね。朝飯前ですよ。これくらい」
すると喜助はその記録媒体をパソコンに繋げ、例の映像を男に見せた
「大好きな彼女の為にやったんスか?」
男はごくりと息を飲み込む
「でもね、紫苑もボクの大切な人なんスよ」