第23章 私、諦めませんから…!
琴乃から紫苑を受けとると、薄く目を開ける紫苑と目が合った
「大丈夫…ちょっと、びっくりしただけだから」
「もう少し休んでたほうがいいっスよ」
「平気」
「無理しないの」
「してない」
歩けるよ、と言いながら無理矢理降りた紫苑の腰を支える
返事がぶっきらぼう
「何か怒ってるんスか?」
「別に怒ってないけど…」
「けど?」
少しだけ頬を膨らませて、チラリと喜助を見た
「喜助さん、あの子のこと知ってるの?」
「あの子って…誰のことっスか?」
さっきのを、見られてた訳ではないんだ
「やっぱいい」
そう言って紫苑は歩き始めた
落ち着いたら段々ムシャクシャしてきた
「いいってなんスか?気になるんスけど…」
紫苑の肩を掴むように腕を伸ばした喜助
「そのうち分かるからっ…」
あれ
目の前がぐるぐるして焦点が合わない
ドサッと音をたてて喜助にもたれかかった
「だから休もうって言ったんスけど…全く」
「ごめ…なさ…」
「謝んなくていいから。仮眠室行きますよ」
紫苑は大人しく喜助に抱かれ、仮眠室に向かった
…─
言いたいことを言うだけ言って逃げ出した
西園寺さんに牽制されるのが怖かったから
だけど冷静になったら、あんな公衆の面前で私は一体、なんてことをしたんだろうって急に恥ずかしくなって
こっそり、西園寺さんの様子を見に戻った
西園寺さんがバランスを崩して、浦原隊長が受け止めているところだった
ズキッと音が鳴った
他の女の人に触れないで欲しい
優しくしないで欲しい
あなたは私の、恋人になるんだから…
凛音は拳を握りしめた
…─
あれから数日、浦原隊長と話す機会を伺っていたものの、これが隊長と一般隊員…それも新入隊員との差なのか…
全くと言っていいほど隊長と話す機会は無かった
とにかく私のことを思い出してもらわないと…
考え事をしながら下を向いて歩いていると、急に目の前が真っ暗になった
「きゃっ」
「っと、すみません。大丈夫っスか?」
尻もちをついた私に差し出される手