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With me

第23章 私、諦めませんから…!



「ごおっっほぉん!!」


喜助の咳払いが部屋に響く

その少し後に男性隊員が冷や汗をかいたのは言うまでもない



…─


紫苑大丈夫っスかね…


式典中紫苑が部屋を出ていくのが見えた

その少し前から顔色が悪かったから、きっと貧血だろう

すぐに様子を見にいきたいのに、今日は式典ということもあり、これでもかとやることがいっぱいある


「…ちょっとなら行って来てもえぇで」


ひよ里が観念したように、呟いた


「本当っスか?!」


仕事全く手についてへんくせによぉ言うわ

喜助は足早に紫苑のもとへ向かった




…─




琴乃が討伐から帰ってくると、キャーキャーと言う黄色い声が聞こえる


「あ、浦原隊長だ!」

「隊長ーお疲れ様でーす!」


新入隊員の彼女たちが手を振ると、それに答えるように軽く手をあげる喜助


「きゃー!カッコいい!」

「手振り返してくれたね!」


あら隊長モテちゃって

隊長の顔は満更でもなさそうで、いかにもデレデレという言葉がぴったり合いそうだった

紫苑見てないといいけど…

念のためさっと周りを見渡す


……あ


そこには体調が戻ったのか部屋から出てきた紫苑の姿があった


『でも彼女いるんでしょ?』

『式で言ってたよね?西園寺十二席だっけ?』

『美人だもんねー敵わないよー』



そう…「そうだそうだもっと言え!好きになるだけ無駄無駄」


まるで自分の心を代弁したかのような台詞に、紫苑は驚いて自分の隣を見る


「なにニヤニヤしてるの琴乃ちゃん?」

「間違ってないでしょ?」


口元に手をあてて、クククと笑う琴乃は完全に面白がっている


「もう体調平気なの?」

「うん、割りと」


顔色も大分戻った


『だからさ、凛音諦めなって』

『隊長って西園寺さんのこと溺愛してるって噂だし』

『勝ち目ないよ』


話の内容に思わず耳が大きくなる

彼女たちは私たちに気付いていないらしい


『でも私、諦めたくない…』


琴乃と隠れるように聞き耳をたてる


『だって私…隊長を追いかけて此処に来たから…。簡単に諦められないよ…好きなんだもん』

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