第23章 私、諦めませんから…!
「はー!緊張した!」
「本当にね」
「改めてよろしくね。東雲十一席」
「長いよっ!」
…─
そして桜の咲く季節
新入隊員が入ってくる季節になった
「もう一年かー早いね」
「なんか色々あったなぁ」
「そりゃ紫苑はねー」
始まるよ、と紫苑に小突かれて背筋を伸ばす
「いやぁ十二番隊にようこそ~。隊長の浦原喜助っス」
そこには一年前と変わらない喜助の姿があった
「相変わらずヘラヘラしてるよね、紫苑の彼氏」
「うるさい」
「何イライラしてんの?」
無意識に唇を噛んで、式典に集中する
別に琴乃がうるさかったわけじゃない
「ねぇねぇ、浦原隊長って初めてちゃんと見たけどカッコよくない?」
「だよね!優しそうだし、強いし、背も高いし」
「どうしよう、私惚れちゃいそう」
耳を塞ぐわけにもいかず、考えないようにひたすらに式典に集中する
「はぁーなるほどねぇ。それで機嫌悪いのね」
さっきよりも強い突きをくらって、思わず脇腹を押さえる
「ボクより副隊長のひよ里サンのほうがしっかりしてて…」
「隊長なんやからあんたがしっかりせぇ!」
クスクスという笑い声が聞こえる
十一席と十二席の琴乃と紫苑は、席官紹介以外特に出番もなく立ってるだけで、琴乃なんかは欠伸までし始めた
ふいに琴乃の腕を細い指が弱くつつく
「ん?どした?」
「ごめん、ちょっと気分悪いから退室するね…」
「付いていこうか?」
貧血か…立ちっぱなしは辛いよね…
「大丈夫。ありがと」
紫苑が出ていったあとすぐ、まったりした入隊式の空気を裂くように扉がバンッと開かれる
「流魂街に虚を確認。討伐に向かいます。東雲、西園寺…西園寺は?」
「体調不良で別室で休んでます」
「そうか、じゃあ東雲だけでいい。行くぞ」
「はい」
颯爽と去っていく隊員たちを、新入隊員は尊敬の眼差しで見つめる
「かっこいいなぁ」
「なぁ今の髪短い人、かわいくてタイプなんだけど」
「え、俺はさっきまでいた髪長い人!めっちゃ美人だったぜ」
「わかる!どこ行っちゃったんだろうな…確か十二席だったっけか」