第23章 私、諦めませんから…!
立ち上がると任命状を持って紫苑に近づく
さすがに圧を感じるというか、身長差的に必然的に見下ろされている
「だって、私現世にも行けないし、床に伏せてばかりで、席官なんて責任ある役職…とても適任とは思えません」
「これは隊長命令です」
狡い…
隊長命令なんて、逆らえるわけないのに
「……」
喜助さんから任命状を受け取り、返事もせずに隊首室を後にした
「ちょ、待って紫苑!」
慌てて追いかける琴乃を喜助は静かに見ていた
「紫苑!」
「琴乃…琴乃も思うでしょ?私が席官なんてなっちゃいけないって」
「そんなことないよ?現世に行けなくても、寝てばかりでも、紫苑は実戦も上手いし私が苦手な事務仕事も完璧だし、寧ろ席官に向いてると思うよ?」
任命状を握りしめる手に力が入る
「本当に私なんかでいいのかな…」
「当たり前でしょ?隊長がお情けで選んだと思ってるの?」
「そ…だよね。喜助さんが、隊長が選んでくれたんだよね」
両手で持った任命状は握りしめた手でもうくしゃくしゃだった
「…でも、なんか手が震えるの」
蹲る紫苑の奥にはこっそりとこちらを見つめる人物がいた
「…ちょっと、震え止めでももらってこよっかぁ」
「なにそれ?」
待っててね~と足早に走り去っていく
姿が見えなくなると、また手元の任命状に視線を落とした
小刻みに揺れる両手
をそっと大きな手で包まれた
「喜助…さん」
「現世に行けないなら尸魂界を守ってください。床に伏せてばかりなら、そうじゃないときに力を使ってください。そんなことで能力のある人を席官から外したりしませんよ」
「でも…」
「紫苑ならできるよ」
握られた手から伝わってくる思いが
優しくて真剣な眼差しが
私の震えた心を溶かしていく
「…はい」
…─
「おつかれっス。みなさん。新しい席官紹介しますね」
珍しく朝一で隊長の声が通る
緊張の面持ちで隊長の隣に立つ
「十一席になった東雲琴乃です」
「十二席の西園寺紫苑です」
どこからともなく手を叩く音が聞こえる