第23章 私、諦めませんから…!
第23章 私、諦めませんから…!
「ふふふんっ♪」
「なぁに、やけに機嫌いいじゃん紫苑」
「そう見える?」
今にもスキップしそうな足取りの彼女は、親友の問い掛けにも顔の緩みが隠せないでいる
「何かいいことあった?」
「ふふ♪」
シャラッと首もとに手を滑らせれば一瞬輝く金属が見えた
「喜助さんに誕生日に貰ったの」
「へぇーよく見せて」
小さな丸いガラス玉の中に、水が入っていて、青い小さな花がユラユラと泳いでいる
空に掲げるとキラッと輝く反射がまぶしい
「すっごい綺麗!」
「でしょー!」
自慢気に見せつけてくるのも紫苑なら嫌な気がしない
「しかもね、喜助さんの手作りなの」
「隊長ってこんなのも作れるのね」
紫苑がここまで嬉しそうな笑顔をしているのは正直久しぶりに見た
護廷隊に入隊してからというもの、いじめられたり、喘息になったり、男に襲われたりと、お世辞にもいい1年だったとは言えない
だけど、紫苑はやっぱりあの人を選んで正解だったと思うよ
「それ、なんて花?」
「えっとね、勿忘草だったかな?私の誕生花らしいよ」
「洒落たことするのね、隊長も」
また首もとに視線を落としては頬を軽く赤らめて、口元を緩ませる
あーこの顔隊長に見せてやりたい
喜助さんとは変わらず上手くいっている
あれからしばらく、薬の試験は延期になった
私の体を考えてのことと、副作用を無くす研究をしているためだ
しばらくはストレスがかかるようなことも、悪い空気を吸うこともなく、入隊してから今が一番穏やかに過ごせているんじゃないかと思う
…─
「え、席官ですか?」
最初に口を開いたのは琴乃だった
2人して隊首室に呼び出されたかと思ったら、任命状が机の上に置いてあった
「そっス。2人ともよく頑張ってくれてますし、1年で席官入りはなかなかないっスよ~」
ワクワクと任命状を広げる琴乃の横で、紫苑の表情は冴えなかった
「あの、お断りします」
自分の分の任命状をそのまま隊長に返した
「え、なんで?紫苑」
「そう言うと思いましたよ」