第22章 ちょっと心配性なんですかね
「ところで喜助はよく迎えに来るのか?」
少し先を歩いていた紫苑は振り返った
「はい。ちょっと心配性なんですかね」
「意外じゃのぉ」
「そうなんですか?」
儂の知ってる喜助はの、と話してくれた
「1人の女子に執着することはなくての、取っ替え引っ替え…後腐れない関係ばかりじゃったからの」
前に琴乃が、喜助さんは女遊びが激しいって言っていたことを思い出す
「来る者拒まず、去る者追わず…女子の為になにかをしたり、ましてや迎えに行ったりすることは無かったのでな…喜助は紫苑に会って変わったの」
紫苑は返事もせずに、頬を少し赤らめる
「喜助は覚えていないみたいじゃが、紫苑は喜助の初恋の相手によぅ似ておる…お互い初恋みたいなもんじゃのぅ?」
「は、初恋っ」
一気に耳まで赤くなる紫苑はやはりいじりがいがある
「なんかくすぐったいですっ」
「照れなくとも良いじゃろうに」
また顔の熱の温度が上がる
「口元が緩んでおるぞ」
ニヤニヤと肘で紫苑を押す
「やめてくださいよぉ、もぅ」
「紫苑、夜一サン」
向かいから早足でこちらに向かってくるのは、今まさに話の中心にいた人物だった
「遅いから結局迎えに来ちゃいましたよぉ」
「スマンの喜助。儂が紫苑と話したくての」
「仲良さそうでなによりっス」
ニンマリ笑うと自身の身に付けていた羽織を脱いで、紫苑にふわっとかける
「夜風に当たると冷えちゃいますよ」
「大事な隊首羽織こんなことに使っちゃだめだよ」
脱ごうとする紫苑の手をだーめ、と制止する
「喜助も来たからあとは大丈夫じゃろ。じゃあまたの」
「おやすみなさい」
瞬く間に夜一は消えた
「ごめんね、お迎え。急に夜一サンに行かせて」
「ううん、ありがとう。話すきっかけを作ってくれて」
どちらからともなく指を絡める
かなり大きい隊首羽織がずり落ちないように時々掛け直す
「ありゃ、気付いてたんスか」
「はは、分かるよ」
「で、なんで顔赤くしてたんスか?」
その一言でさっきの会話を思い出し、また頬が熱くなる
ちらっと喜助さんの顔を見ると、パチッと目が合って、すぐにそらす