第22章 ちょっと心配性なんですかね
「喜助さん、傍に居てくれてありがとう…」
「ん、どうしたんスか?急に…」
上半身を起こそうとする紫苑を手伝う
「喜助さん…」
「大丈夫?」
「……ぎゅってして?」
頼りなさげに広げる両手
場に似合わずキュンと鳴るボクの胸
ふわっと紫苑を抱き締めると汗ばんだ肌が痛々しい
「あ、汗臭いよねっ…ごめんねっ…」
離れようとする紫苑をグッと引き寄せる
「やっ…喜助さんっ」
「紫苑が頼んだんでしょ」
「でも、ほんと臭いし、びっしょりで気持ち悪いから…離して?」
「だーめ」
こういうときの喜助さんは何を言っても聞かない…
「だって珍しく紫苑が甘えてくれてるんスもん…」
きゅん、と胸が鳴って諦めて私は喜助さんの胸に頭を預けた
「喜助さんの匂い大好き…」
「まーたそんな可愛いことを」
「落ち着くの」
「嬉しいこと言ってくれますねぇ」
柄にもなく照れて、照れ隠しに紫苑を擽る
「きゃあっ!喜助さ、くすぐったい!んもぅ!」
「ハハっ、ごめんごめん」
「もう大丈夫そうですね、西園寺さん」
ノックにも気付かず2人の世界に入っていたようだ
気づいたら近くには卯ノ花隊長がいた
「あ、卯ノ花隊長」
「仲がよろしいのですね。西園寺さん、点滴終わったら帰って頂いて結構ですよ」
「はい、ご迷惑おかけしました」
「お気になさらず、またいつでも来てくださいね」
「ありがとっス」
ニコッと笑って部屋を出ていく彼女はまるで聖母のようだった
「点滴まだ結構あるね…ボク戻ってちょっと仕事してきてもいいかな?紫苑、1人で大丈夫?」
「うん、私に付いててくれたからお仕事できなかったんだよね。ごめんね、大丈夫だよ」
「言ったでしょ。紫苑の傍にいるのも仕事だって。後で迎えに来るから」
部屋を出る喜助さんにヒラヒラと手を振った
…─
「いつまでそうしてるんスか?夜一サン」
「気付いておったか」
帰り道をこっそりとつけてくる猫がいた
喜助が声をかけると途端に人の姿に戻る