第21章 保護者みたァやな
「帰らないっス」
「帰って!!顔も、見たくない…」
初めてボクに向けた大きな声…
琴乃サンと言い合ってるのは聞いたことあるけど、こんなにボクに対して怒ってる紫苑は初めてだった
「…分かりました」
紫苑の気持ちが落ち着くまで、1人にしてあげよう…そう思って背中を向けた
「や、待って…行かないで…」
「…どっちっスか?」
ボクは振り向きもせずに冷たく言い放った
「お願い……っ……置いて行かないで!…あの子のところに行かないで……っ!」
"朝まで一緒に居たの!"
"でね、今日の夜も…"
「紫苑?」
「やだやだ…居なくならないで…嫌いにならないでっ…」
「紫苑、落ち着いて」
「私から喜助さんを盗らないでっ!喜助さんは私のものなの!」
「紫苑っ!」
ぎゅっと抱き締めると荒くなった息が徐々に落ち着いてくる
久しぶりに見た、紫苑の涙
ヒック、ヒックと紫苑の肩が上下している
背中を優しく撫でる
「ボクはどこにも行かないよ…ボクは紫苑のものだよ…」
安心させてあげたいのに
「もう…誰も…居なくならないで…」
誰も…
もしかして、家族のことを…重ねているのだろうか
突然居なくなってしまった、家族を
「昨日の夜どこにいたの?」
少し冷静になった紫苑が、声を低くした
「夜は、局のほうに…」
「誰といたの?」
「え?」
「朝まで誰といたの?」
もしかして…
「女の人と居たんでしょ?」
「紫苑、ちゃんと聞いて。それはね…」
「今日の夜もその人と過ごすの?」
「紫苑、だから…」
「私のこと嫌になった?面倒臭くなった?浮気…してるの?」
涙も言葉も止まらない彼女を、落ち着くまで抱き締めるしかなかった
「なんでなにも言わないの?なんで言い訳してくれないの?本当だから?」
「紫苑、落ち着いて…」
呼吸が荒くなる紫苑
小さな背中を何回も、優しくトントンとしていると紫苑から力が抜けていくのがわかった
「落ち着いた?」
「……うん」
紫苑を自分から離し、まだ少し潤んだ目をまっすぐ見る