第21章 保護者みたァやな
卓袱台に、冷めた二人分の食事
喜助さんが帰ってきたら一緒に食べようと思っていたら、日付が変わったって手をつけられずにいた
きっとまた研究室に籠ってるんだろう
喜助さんの部屋で暮らしはじめてから、こんな日がなかったわけじゃない
むしろ一緒に寝れないことのほうが多かった
だからこんな風に食事も食べずに、心配で寝ることもできずに待たれるなんて、きっと喜助さんを困らせるだけだ
いつもの夜だった
いつものように研究でもしていた
そう、思えばいい…
…─
「おはよう紫苑…うっわひっどい顔。昨日仲直り…」
「おはよ。昨日ね、帰ってこなかった」
「え、そうなの?」
「帰ってこない日のほうが多いから、別に気にしてないよ」
連絡だって、あったりなかったりだし…
私にはわかる
その笑顔が全然笑ってないこと
「じゃあなんで目の下クマできてんの?」
「……」
「寝ないで待ってたんでしょ?」
「ほんと、琴乃は鋭いね」
「バカ、バレバレだから」
琴乃にはほんと嘘つけない
ついたってすぐにバレて…
その時少し遠くを通りすぎる二人の女性死神の声が聞こえた
「え?浦原隊長と?」
「そう!朝まで一緒に居たの!」
「よかったじゃん!」
「でね、今日の夜もね…」
なに今の会話?
誰と?いつ?
「紫苑、大丈夫?」
こんな会話を聞いて紫苑が平気な筈がない
「琴乃…喜助さんは私が嫌になっちゃったのかな?」
「そんなわけないでしょ!何かの間違いだよ!」
喜助さんが…
あの人と…
"朝まで一緒に居たの!"
"でね、今日の夜も…"
やだやだやだ
喜助さんは私のものなのに
やだやだやだ
お願い
捨てないで…
「紫苑!紫苑!」
「ハァッ……ハァッ…」
あの子のところに行かないで
私を残して、置いていかないで…