第21章 保護者みたァやな
翌日─
「喜助さん」
「あれ、紫苑。珍しいっスね、局のほうに来るなんて」
「喜助さんが薬持ってこないから、来ちゃった」
一晩寝てすっかり元通りになった紫苑は、最後のひとつを試そうと、喜助のそばにあった試作品に近寄る
「だーめ」
「へ?なんで?」
「昨日あれだけ強い副作用があったんスよ?今日はおやすみです」
子供からものを取り上げるように、喜助は手を高くあげる
紫苑が届くはずもなかった
「んーでも早く喜助さんの力になりたいのに…」
その言葉に喜助はため息をつく
「紫苑ねぇ、自分の体調もうちょっと心配してくださいよ。一日たって元気になったと思っても、体には相当負荷がかかってるんスよ?」
「…そう、だよね」
「続けて飲むと本来なかった副作用がでてしまうかもしれないし、髪が抜けたり、吐き気がとまらなかったりっていうやつもあるかもしれないんスよ?」
「…うん」
「自分で作っといてアレっスけど、紫苑が苦しんでるの見るのもキツイんスよ…」
紫苑は伸ばしていた手を引っ込めた
胸元に手を当て死覇装をキュと握る
「…ごめんなさい」
俯きがちに目尻を下げて
肩を落として
小さい彼女が更に小さく見えて
ハッとした
「ごめ…」
ボクに背を向けて
静かに部屋を出ていく
1人になった部屋で頭を抱えた
「なにやってるんだボクは…」
また言い過ぎた…
もっとやさしく言えたはずなのに
辛いのは、苦しいのは、紫苑なのに…
…─
「はぁ…」
「なぁに喧嘩でもした?」
「喧嘩って程じゃないんだけど…」
喜助さんは私の体を心配して言ってくれてる
それを私は全然考えてなかった
「お互いがお互いを想いすぎなのよ」
「それが良い方向に行けばいいんだけど…」
また小さなため息
「今日琴乃の部屋に泊まってもいい?」
「何言ってんの?美味しいご飯作って、いつもみたいにお帰りって言って、早く仲直りしな」
「うん…」
だけどその夜、喜助さんは帰ってこなかった