第21章 保護者みたァやな
「はい、阿近が」
「阿近サン?」
「そそそそそうや!阿近や!」
「へぇ…あの子もちょっと躾しとかないとっスねぇ」
あぁ!笑ってへん!目が一切笑ってへん!
「…っ……ぅ」
喜助の腕の中で紫苑の額に汗が滲んでくる
「紫苑っ大丈夫っスか?」
「紫苑…」
「ちょっと副作用が強いので局で様子みますね」
「はい」
喜助は紫苑を抱いたまま局へ戻る
喜助がいなくなったことで平子は肩を落とす
「はー心臓に悪いでホンマ」
「隊長紫苑のことにはすごーく鼻がきくんですよ」
「せやかてアイツ人格変わりすぎやろ」
はーせっかく紫苑抱き締めとったんになァ
やらかかったなァ…
「ちゅーかなんの薬飲んでるん?」
「あぁ喘息の薬ですよ。隊長が作った試作品です」
「大変やなァ…紫苑」
「ところで何しに来たんです?」
暇潰しや
そう言って自分の隊舎へ戻っていった
…─
「紫苑…」
被検体用のベッドに、とりあえず横にさせると力なくくったりとする紫苑
「ん……あれ、きすけ……さん?」
さっき平子隊長を見た気がしたんだけど…
「紫苑、大丈夫?」
紫苑は小さくうなずく
「阿近サンに聞いて心配で…」
「来てくれたんだ…嬉しい」
紫苑の声はどことなくいつもより元気がないように感じる
もちろん副作用のせいで疲れてるんだろうけど…
「ボクのせいでごめんね」
「ううん、私嬉しいよ。喜助さんが私だけのために頑張って作ってくれてるの」
「うん、でも…」
「喜助さんにしかできないんだし、まだ始まったばかりだから…ね」
「紫苑…」
「絶対作ってくれるんでしょ?」
今だって頭痛や気持ち悪さで辛いはず
額の汗が引いていない
なのにニッコリ笑う彼女がなんか、健気に見えてこの子の為に絶対作らなきゃって強く思った
「待っててくださいね」
紫苑の手を握ると、キュと握り返してくれた
抱き締めたくなって、キスしたくなって、紫苑を見たら
「寝ちゃってる…」
喜助は紫苑を他の局員に任せて、研究室へ戻った