第20章 キミが欲しい
果てたばかりだというのに内側から込み上げてくる躍動感に紫苑は気付いているだろうか……
「ね、紫苑、もう一回しよ…」
「え?もう一回っ?」
「いや?」
そんな切ない表情で聞かれたら断れないし…それに
「嫌……じゃないけど……」
「ボクがどれだけ我慢したか…」
「ご、ごめんなさい」
「今夜は寝れないよ」
喜助は体を起こし紫苑に覆い被さる
何も邪魔の入らない場所でお互いの愛をこれでもかというくらいに確かめ合う
喜助の心の小さなところを満たしていく行為が、同時に紫苑の心も満たしていく
幸せ……だと思った
誰かを心から愛したことがなかった
いつも言われるがままに付き合って、求められるがままに応えて、だけどそこに私の愛はなかった
好きになろうと思えば思うほど心が離れていって、気づけば捨てられていた
私は誰のことも愛せないんだと思っていた
琴乃とデキてる、なんて噂がたったこともあったっけ
だけど今、体を重ねているこの人は……喜助さんだけは違った
初めて欲しいと思った
初めて好きだと思った
初めて盗られたくないと思った
愛してる
よりももっと
愛を伝えられる言葉があればいいのに
私はこの人に溺れている
その後お互い何度目かもわからない絶頂を迎え、いつだかわからない強制的な眠りに落ちた
吐息がかかるくらい、近くで
お互いの温もりを感じながら…
…─
朝を大分過ぎても甘ったるい匂いに包まれた部屋は、昨夜の熱い夜を鮮明に甦らせる
疼きだす下半身を必死に抑える
目を開けたら隣に紫苑がいる
それだけで、幸せな気持ちになる…
「ん…」
「…起きた?」
うっすら目を開けたものの、大好きな人を確認したら安心してまた瞼が下がる
「そろそろ起きて、もう昼前っスよ」
その言葉にピクッと反応するものの、眠気に勝てない
「起きないとまた、襲っちゃうよ」
心臓がドキッとなって、ぎゅっと目を瞑って体を起こそうとすると腰が張り付いたように上がらない
「ッー……」
顔をしかめる紫苑の腰を喜助は優しくさする